マイナンバーの提供を職場で求められたときの対応

組合員の方からマイナンバーの提供を職場で求められたときの対応について相談を受けました。同様の悩みを抱えている方もいると予想されるので、ここにまとめておきます。
1.結論
お忙しい方のために先に結論を書きます。「マイナンバーの提供に協力する義務はあるが、提供を拒否したからといって法律上の不利益はない」です。職場内の担当者や上司から嫌がられるといった事実上の不利益については何とも言えません。
2.なぜ職場でマイナンバーの提供を求められるのか
そもそもなぜ職場でマイナンバーの提供を求められるのでしょうか。それは所得税、住民税、雇用保険、健康保険、厚生年金の手続きのためです。これからは順次これらの制度のための書類にマイナンバーを書く欄が出てくるのです。この欄を埋めるためにマイナンバーの提供を求められるわけです。
3.マイナンバーを提供しなかったらどうなるのか
もしマイナンバーを提供せずに、所得税や雇用保険、健康保険、厚生年金のマイナンバー欄が空白だったらどうなるのでしょうか。長くなりますが、担当省庁の回答を引用します。
・国税庁(所得税担当)の回答

Q2‐10 従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。
(答)
法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで書類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。
それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。
経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。
なお、法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできませんので、個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。
(出典:国税分野におけるFAQ|お知らせ|国税庁
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/04kokuzeikankei.htm

・厚生労働省(雇用保険の担当)の回答

Q11 従業員から個人番号の提供を拒否された場合、雇用保険手続につ いてどのような取扱いとなるのか。
(答) ○ 雇用保険手続の届出にあたって個人番号を記載することは、事業主に おいては法令で定められた(努力)義務であることをご理解いただいた
上で、従業員から個人番号の提供を求めることとなりますが、仮に提供 を拒否された場合には、個人番号欄を空白の状態で雇用保険手続の届出
をしていただくこととなります。 ※個人番号の記載がないことをもって、ハローワークが雇用保険手続の届出を受 理しないということはありません。
○ その上で、再度、従業員から個人番号の提供を求めた上で、個人番 号の提供があった場合には、所定の様式により提出していただくこと
としています。
(出典:マイナンバー制度(雇用保険関係) |厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000087941.html
上のリンク先から「よくある質問(Q&A)」をクリックしてhttp://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000093276.pdfを開いたところにあります

念のために全国商工新聞(2015年11月9日付)の各省庁への取材結果も引用しておきます。

【内閣府】
 「個人番号カード」の取得は申請によるもので強制ではない。カードを取得しないことで不利益はない。「扶養控除等申告書」「源泉徴収票」などの法定資料や雇用保険、健康保険、厚生年金保険など書類に番号が記載されていなくても書類は受け取る。記載されていないことで従業員、事業者にも不利益はない。
 従業員から番号の提出を拒否されたときは、その経過を記録する。しかし、記録がないことによる罰則はない。
【国税庁】
 確定申告書などに番号未記載でも受理し、罰則・不利益はない。
 事業者が従業員などの番号を扱わないことに対して国税上の罰則や不利益はない。
 窓口で番号通知・本人確認ができなくても申告書は受理する。
 これらのことは個人でも法人でも同じ。
【厚生労働省】
 労働保険に関して共通番号の提示が拒否され、雇用保険取得の届け出で番号の記載がない場合でも、事務組合の過度な負担が生じないよう、ハローワークは届け出を従来通り受理する。罰則や不利益はない。
 労働保険事務組合が番号を扱わないことによる罰則や不利益な扱いはない。
 番号を記載した書類を提出するとき、提出者本人の番号が確認できない場合でも書類は受理する。
(出典:全商連[全国商工新聞] マイナンバー 記載なくても不利益ない 全中連に各省庁が回答
http://www.zenshoren.or.jp/zeikin/chouzei/151109-01/151109.html

4.いつから始まるのか
鋭い人は上の公式回答が所得税と雇用保険しかないことに気づかれたかもしれません。そうなのです、マイナンバーの記載はこの2つが早く始まるのです。どちらも平成28年分からです。逆に言うと今年(平成27年)分については早く始まる所得税と雇用保険についてもマイナンバーの記載は必要ありません。
また、公式の回答がまだない地方税や健康保険、厚生年金についても、同様の対応(マイナンバー欄が空欄であっても手続きをするという対応)がなされることが強く予想されます。
5.職場での対応
職場でマイナンバーの提供を求められ、どうしても提供したくない場合は、マイナンバー欄が空欄でも所得税や雇用保険などの手続きは大丈夫だという上記の内容を伝えることをおすすめします。
もしもマイナンバーを提供しないという理由で職場で懲戒処分を受けたとしたら、それは労働契約法15条に照らして無効でしょう。

労働契約法15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

6.まとめ
以上より、「マイナンバーの提供に協力する義務はあるが、提供を拒否したからといって法律上の不利益はない」という結論になります。
それにもかかわらずマイナンバーの提供を拒否したことを理由として懲戒処分を受けたといったことがありましたら、お近くの労働組合(ユニオン)等にご相談ください。

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