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自立と支援 対立 ホームレス 大阪市(東京新聞)

 ホームレスの数が日本一の約五千人と推定される大阪市。八月に世界陸上の会場となる東住吉区の長居公園で五日、野宿生活をするホームレスのテントが行政代執行法に基づき強制撤去された。一方、日本最大の日雇い労働者の「寄せ場(簡易宿泊所街)」がある西成区のあいりん地区では、大量のホームレスが民間支援施設を使って居住実態がないのに住民登録していたことが表面化。“自立と支援”という目標に程遠い、ホームレスと行政の対立の構図が続いている。 (大阪編集部・黒谷正人)

■渦巻く不満

 「(自分たちは)ごみじゃない。人間だ」「話し合いと代替地を」−。最後まで残っていた野宿生活者、支援者らと、市職員のもみ合いが続く。怒号の中、約三時間がかりで、長居公園の一角にあったホームレスのテント村は撤去された。

 市は、世界陸上開催に合わせた園路整備の一環として、園内の野宿生活者のテントなどを工事区域内の私物として自主撤去するよう求めてきた。「市民の苦情もある。(ホームレスが)かたまる形態は改めざるを得ない」と市の担当者。

 ホームレスには、生活保護の受給を奨励、五カ所に設けた食事付きの自立支援センターや、大阪城公園内に仮設したシェルター(緊急一時宿泊施設)への入所を促してきた。センターには現在、平均年齢五十歳の二百五十人が入る。入所期限は三カ月が基本で最長半年まで。この間に仕事を見つけ「脱ホームレス」を目指す。

 だが、常用雇用の場を得られるのは、わずか四割。規則や不便さを敬遠し、入所への反応は鈍い。センターの入所経験があり、長居公園で生活する愛知県出身の小川次郎さん(59)は、仕事を求めて大阪に来て四十年。簡易宿泊所暮らしから三年前に野宿生活になった。今は空き缶拾いなどで一日二千円を稼ぐのがやっとだが「(入所しても)年取ったら仕事なんてあらへん。また元のもくあみ」。十年前に四国を出て野宿生活者となった男性(67)も「また、どこかへ行くだけやろ」と、あきらめ顔でつぶやいた。

■切実な「登録」

 昨年十二月に三千五百三十人の住民登録が表面化したあいりん地区の釜ケ崎解放会館。登録は一九七〇年代から続いてきたとみられる。NPO法人「釜ケ崎支援機構」の事務所に百二十九人、社会福祉法人「ふるさとの家」でも二十七人、同様のケースが判明した。

 日雇い労働者の失業手当を受け取るために必要な雇用保険被保険者手帳や年金受給などにも、住民票は不可欠なだけに、野宿生活者らにとって住民登録は切実だ。これに対し、市は住民基本台帳法を盾に、居住実態に応じた住民票の適正化を進める。

 「公的サービスの一環として、ホームレスでも住民登録として使える場を設けてくれれば、今日の問題はなかった。行政も住民登録制度の中に入れる機会はなんぼでもあった」と、釜ケ崎支援機構の沖野充彦事務局長(46)は指摘する。

■隠れた数字

 国が二〇〇三年の野宿生活者の全国実態調査で把握したのは約二万五千人。国は今年一月、〇二年制定のホームレス自立支援法に基づく二回目の全国調査を実施、三月以降に公表する。

 大阪は一九九八年の八千六百人をピークに、ホームレスは減少傾向にある。東京(二十三区)でも昨年八月時点でホームレスは前年度より約六百人減の三千六百七十人だ。

 大阪市のホームレス自立支援課は「景気の上向きで(今回は)四千人台になるのでは」と推測する。しかし、正規雇用の減少など、雇用形態の変化も進む「格差社会」。予備軍の潜在も忘れてはならない。

■対話解決図るべき

 ホームレス自立支援法に詳しい笹沼弘志・静岡大教授(憲法学)の話 テント村の存在が、長居公園の適正な利用が妨げられているとは言えない。大阪市は、行政代執行ではなく(ホームレスたちと)十分なコミュニケーションを取って問題解決を図るべきだったのでは。住民登録問題は、市が長期にわたり黙認してきた“特例措置”ともいえ、法運用をすぐさま変更すれば、選挙権など憲法上の権利をはく奪することにもなる。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20070206/mng_____kakushin000.shtml