はじめに読みもの実用調べもの・学習《ピックアップ》メディア連絡先More ... | そしてテント村は無くなった 長居公園テントの強制撤去(JANJAN)2007/02/06 (ビデオ)長居公園テントの強制撤去:3分3秒[Clipstream Video] http://202.90.10.24/janeye/shiminkisha/0702059516/01/01.html 2月というのに大阪市東住吉区にある長居公園は日差しがきつく、春のようなぽかぽかとした暖かい陽気だった。大阪市は5日、公園でテント生活をしていた人たちに対して、物件の強制撤去を行い、人も強制的に立ち退かせた。行政代執行法にもとづくもので、13物件9人の所有者について執行したものだ。 (写真)多数の民間警備員がものものしく現場を警戒した(撮影:山本ケイ) この日は支援者らおよそ50人も駆けつけ、テントの中心にある長居公園テント村にはやぐらが組まれ、午前9時前から撤去に反対する寸劇が行われる一方、支援者らが「野宿の人達の休息の場であり、生活の場であり、襲撃から身を守るための命のよりどころであるテントを、権力でもって力づくで奪い取る。この非人道的前近代的、人権無視の蛮行に、腹の底からの怒りをもって抗議する」などと書いたビラをまいて中止を訴えた。 2002年に国が実施した「ホームレスの実態に関する全国調査」では全国で約2万5000人のホームレスの人が野宿をしており、うち大阪市は6603人で全国でも最多となっている。長居公園には昨年10月時点で24人の野宿生活者がいたが、自主的な退去や生活保護の適用などにより10人以下になっていた。 ホームレス問題に詳しい静岡大学の笹沼弘志教授(憲法学)によると「行政代執行は物件に対してはできるが、人に対してはできないはずで大阪市のやり方は乱暴です。そもそも市は野宿者に対して住所がないことで市民扱いしておらず何をしてもいいと思っているのではないでしょうか。野宿をしていることについて本人に原因があるとする考えがおかしいのです」と指摘している。 この日、大阪市は市職員205人、民間警備員290人を動員して物件はもとより立ち退きを拒否し、それを支援する人達も1人ひとり排除した。午前9時の執行宣言を皮切りに次々とテントが撤去され、2時間ほど座り込みを続けるテント所有者と支援者らとの間で、にらみあいが続いたが、午前11時40分に職員らが人の排除を始めた。激しく抵抗する人もおり、「帰れ、帰れ」などの叫び声と怒声が飛び交う中で15分ほどで全員を立ち退かせた。 (写真)強制排除で激しくもみあう職員と支援者ら(同) 市ゆとりとみどり振興局によると「今回の代執行は年次計画で決まっていた街灯整備と、市バス停留所に続く新しい進入路を新設するためで、世界陸上とは直接、関係はありません」としている。だが8月開催の世界陸上は市が総力をあげて取り組んでいるイベントであり、地下鉄や街頭には告知ポスターがたくさん掲示されている。開催に合わせて強制撤去をしたと思われても仕方があるまい。 強制撤去は、はからずも劇場型の出来事になってしまった。市が通路にバリケードを組み、野宿者、支援者、市側がバリケードの「内」、マスコミ、やじ馬、公園利用者らが「外」という構図だ。「外」の人が「内」の人を見るという奇妙な劇場のような空間が出現した。それはあたかも壮大な街頭劇をみているような異様さだった。時々、内側の人が外側の人に連帯を呼びかけるが、あくまで外の人は無関心を装った。道路を隔てた公園を見通せるマンションの住民は誰も騒ぎの様子を見ていなかった。 (写真)撤去後はフェンスで現場が保存された(同) そしてかつては24人の生活があった場所が3時間足らずでいとも簡単に跡形もなく無くなってしまったことに虚しさを感じる。夕方には何事もなかったかのように、市民がジョギングをし、ベンチで歓談する人達の姿がある。これほど簡単に「時間」が消されてしまうとは人の暮らしとはなんなのだろう。そして何より危惧されるのはこの後、行き場を失った人がどこに居場所を求めるのかだ。 (山本ケイ) |