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大阪市テント強制撤去 長居公園500人を動員(産經新聞)

2月5日16時21分配信 産経新聞

 今年8月に開催される世界陸上大阪大会を控えた大阪市東住吉区の長居公園の整備工事をめぐり、大阪市は5日、同公園内に住むホームレスの人たちのテントや小屋を行政代執行法に基づく強制撤去を行った。市は職員や警備員を約500人動員。反対するホームレス側も各地から支援者ら約200人が集まり、現場は騒然としたが、正午すぎにすべて排除された。逮捕者はなかった。

 市は当初、今年1月から同公園南西地区の園路整備や照明灯新設工事を計画。建設予定地につくられているテントは不法占拠で工事開始の支障になっているとして、13カ所のテントや小屋の強制撤去に踏み切った。テントや生活物品などは市が一時保管するが、運送費など撤去費用を1カ所あたり10万円請求する。

 この日朝から、ホームレス側がテント近くにステージを設置、強制撤去に抗議する意味を込めて自分たちの生活実態を演劇仕立てにした芝居を始め、この周りを市内外から駆け付けた支援者が囲んだ。市側はホームレスの居住エリアを取り囲むようにバリケードを設置、大阪府警機動隊員らも周辺の警備にあたるなか、午前9時には行政代執行宣言。テントの強制撤去を始めた。ステージ周辺では市側と支援者らのもみ合いが続き、作業がたびたび中断したが、正午すぎに排除が完了、市側が終了宣言した。

 市は強制撤去に先立ち、昨年10月からホームレスの人たちに公園からの立ち退きとテントの撤去を要請。15人は生活保護受給が認められたり、市の運営する自立支援センターへの入所が決まり退去に応じたが、行き先の決まらない人たちがテント居住を続けていた。

 市がホームレスに対する同法に基づく強制撤去を実施するのは昨年1月に大阪城公園(中央区)・靫(うつぼ)公園(西区)のテント撤去を行って以来3回目。

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 ≪視点≫

 ■対処療法の域でないホームレス対策

 大阪市が長居公園に住むホームレスの人たちのテントの強制撤去に踏み切った。テントは公共空間をふさぐ不法占拠状態となっていることは事実。市は手順を踏まえて撤去を行っており、法的な問題は見受けられない。ただ、ホームレス対策という観点でみると、市の対応は「対症療法」といわざるをえない。

 市内に住むホームレスの人たちは4000人以上とされている。あいりん地区のほか、市内各地の公園などに多くのテントがあり、長居公園を追い出される人たちは、別の公園などで野宿生活を強いられる可能性が高いからだ。

 市側が提示した支援策の一つは自立支援センターへの入所だが、同センターの入所総数は平成18年12月末現在で、約260人と、定員の半分程度。入所を拒む人からは「滞在期限の半年程度で、再就職先がなかなか見つからない」「ダメな人間という扱いを受ける」といった声も聞かれる。相部屋で厳しい規律も不評で、現状では実効性の高い施策とは言い難い。

 入所者の待遇改善など受け皿の充実や総合的な対策もなく、単に法令違反だけを問うても問題の解決にはほど遠い。昨年の大阪城公園、靫公園に続いて2年連続で強制撤去が行われたことは、市の無策ぶりを示したともいえる。

 市は公園に住む人たちへの対応をホームレス施策全般のなかで位置づけなければ、混乱を繰り返し引き起こすことになりかねない。(河居貴司)

最終更新:2月5日16時21分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070205-00000024-san-soci