[トップ][編集履歴][一覧][最近の更新][->English]

路上で死ぬことなんて、ないよね?

お気楽なホームレス生活

養老猛は『バカの壁』(2003年,新潮新書)で次のように書いています。

「ホームレスでも飢え死にしないような豊かな社会が実現した。…ホームレスはピンピンして生きている。下手をすれば糖尿病になっている人もいると聞きました」(112頁)

この記述がイメージさせる「お気楽なホームレス生活」は、少なくない人が野宿する人々に対して持つイメージなのかもしれませんが、実際のところ、路上あるいは公園・河川敷で暮らすことは、それほどお気楽なものではなさそうです。

西成区で300人以上、死亡率3.6倍

「西成区では、寒さなどで路上で死んだり路上から病院に運ばれて死んだりしたホームレスが絶えない。その数は一昨年、300人を上回った」(朝日新聞2000.12.10)

次のようなデータもあります。黒田研二(大阪府立大学教授)は、大阪府監察医事務所等の資料をもとに、2000年に大阪市内で発生した「ホームレスの死亡例」(野宿者213例)の検死・解剖結果を分析した結果、男性野宿者の標準化死亡比(SMR、日本全体の男性の死亡率を1とする)が3.6であること明らかにしました。つまり、野宿者の死亡率は同年齢男性の一般の死亡率よりも3.6倍高いのです。また、野宿者の死亡例213例には、8例の餓死と12例の凍死が含まれていました。病死172例には栄養失調症が含まれていました。

野宿者にとって、野宿という環境は「死への圧力」に満ちた、死なないためにはお気楽にはやっていれない環境なのです。