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野宿者テント強制撤去 現地ルポ 大阪・長居公園(神戸新聞)

2007/02/06

(写真)人間の鎖として舞台を守っていた支援者を連れ出す大阪市職員ら=大阪市東住吉区、長居公園

 怒号と悲鳴の中、次々とブルーシートがはがされる。大阪市東住吉区の長居公園テント村。行政代執行法に基づく大阪市の強制撤去で、野宿者たちは生活の場を追われていった。公園はきれいになったが、ホームレスの問題は解決を先送りされただけで、その筋道すら見えない。現地を取材した。(高田康夫)

 対象のテント村には、阪神・淡路大震災で被災して流れ着いた男性や姫路市の元暴力団員ら九人が生活していた。

 各地の強制執行で行き場をなくし、流れ着いた住人もいる。小川次郎さん(59)は二年前、愛知万博開催を前に名古屋市の白川公園でテントを撤去された。藤田則義さん(56)は昨年、大阪城公園を追い出されている。

 この日の強制撤去を前に、住人らは自ら出演する芝居を上演しようと相談した。大阪市と争うのではなく、芝居を通して市側に思いを伝えたいと話し合った。

 午前九時前、市職員らがテント村を囲むのに合わせて芝居が始まった。「命に代えても友達を守り抜く」「世界を愛している」。一人一人がせりふに思いを乗せて、声に出す。支援者約二百人が、舞台の回りに「人間の鎖」をつくった。

 芝居をよそに、市職員が行政代執行を宣言。住人のテントを次々撤去していった。支援者の「帰れ」コールの中、住人の中桐康介さん(30)が「おれらは物じゃないんだ。人間として抗議します」と涙声で叫んだ。唯一残った舞台も瞬く間に解体され、テント村の住人はばらばらになった。

 大阪市は、まず住人による自主撤去を求め、市設置の自立支援センター入所などの支援策を示したが、いずれも問題解決にはほど遠い内容。市ゆとりとみどり振興局の千坂和男課長も「自立してもらうには就労が必要だが、社会情勢が伴うだけに難しい」と不十分さを認める。

 また、今回の支援策では、テントがなく公園のベンチや階段で寝ている十数人の野宿者は対象外。今冬、テント外の野宿者が二人凍死している。

 撤去終了後の五日午後、大阪市は記者会見を開き、関淳一・大阪市長の「今後は安心して憩える公園となるよう努める」とのコメントを発表。テントの住人については「またテント生活をする人もいるだろうし、どこへ行ったか分からない人もいる」と答えた。

http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000234352.shtml