長居公園テント村強制撤去問題とは
このエントリーでは、長居公園テント村に対する行政代執行にまつわる問題を扱う。2006年1月30日に大阪市が行った大阪城公園・靭(うつぼ)公園のテント村に対する行政代執行からちょうど1年経とうかという時期に問題が起こっている。
大阪城公園の場合は「全国緑化フェア」、靭公園の場合は「世界バラ会議」、そして今回の長居公園の場合は2007年8月の世界陸上といったように、イベントと連動した形でテント村の強制撤去が計画されている。行政代執行の実施理由について、「市民からの苦情」も上げられるが、イベント開催のためというのが実際の所ではないかと推測できる(大阪城公園・靭公園の強制撤去において、行政代執行前に上げられていた「市民からの苦情」が、行政代執行後に報道された大阪市長 關淳一のコメントにはなく、イベントに関連した理由が述べられた)。
※「全国緑化フェア」「世界バラ会議」については、Q&Aの「バラ会議、緑化フェアって、なに?」を参照
※その他、関連する項目として、Q&Aの「行政代執行って、なに?」、事例集の「強制排除」を参照
次項では強制撤去に関連する主な出来事について記載する。
強制撤去に関する経緯
- 2006年10月13日 南部方面公園事務所から長居公園整備工事を名目としたテント撤去を迫るビラが配布される。
- 2007年1月5日 公園事務所による長居公園仲間の会のテント村に対し、「弁明の機会付与の通知書」が配布され、行政代執行手続きが開始される。
- 2007年1月10日 弁明書提出期限(Sさん、Kさん、Fさん、Nさんの4名が提出→長居公園テント村住人による大阪市に対する弁明書)。
- 2007年1月15日 除却命令書の配布(除却期限1月21日)。
- 2007年1月18日 行政代執行に先立って、公園内の4軒のテントが撤去される。
- 2007年1月19日 法学者・弁護士・司法書士が、大阪市に対し、抗議・要望書を提出(法学者・弁護士・司法書士による抗議・要望書)
- 2007年1月21日 長居大輪祭り・冬の陣が開催される。多数のミュージシャン、パフォーマーによる舞台が持たれた。メインは劇団パニック(テント村住人、地域住民、支援者など有志による劇団)による芝居であり、テント村住人の思いがセリフの端々に込められているもの。
- 2007年1月22日 アジア居住ネットワーク(ACHR)が、大阪市に対し、抗議文を提出(アジア居住ネットワーク(ACHR)による抗議文)。
- (同日)アイヌ・沖縄を考える会が、大阪市長に対し、抗議文を提出(アイヌ・沖縄を考える会による抗議文)。
- 2007年1月23日 06→07越冬闘争に連帯する学生・青年実行委員会 路上と大学をむすぶ有志連絡会・京都が、大阪市に対し、抗議・要望書を提出(路上と大学をむすぶ有志連絡会・京都による抗議・要望書)。
- 2007年1月25日 戒告書配布(29日まで)。
- 2007年1月28日 なかまユニオンが大阪市に抗議文を送付(なかまユニオンによる抗議文)
- 2007年1月29日 NPO法人長居公園元気ネットが「長居公園の野宿者テント村強制排除に関する陳情書」を提出、受理される。
- 長居公園仲間の会が、撤去に反対する署名2342筆を大阪市に追加提出する。署名の総数は5100筆となる。
- 2007年1月30日 代執行令書が交付される。代執行令書交付の際、長居公園仲間の会が話し合いを求める申し入れ書を手渡そうとしたが、公園事務所は受け取りを拒否する(長居公園仲間の会による大阪市に対し話し合いを求める申し入れ書)。また、行政代執行の実施が2月5日であることが公表された(正式には、1月30日の代執行令書交付、2月5日に行政代執行実施の予定は29日には公表されていた)。
- 2007年1月31日 ワンデイアクション実行委員会が大阪市に要請文を送付(ワンデイアクション実行委員会による要請文)。
- 2007年2月2日 A&U(Act and Unite to Stop the War)が大阪市に抗議を申し入れる(A&Uのブログ参照)
- 2007年2月2日 関西研究者有志が「長居公園行政代執行に対する研究者声明」を大阪市長宛に提出(長居公園行政代執行に対する研究者声明参照)。
- 2007年2月5日 行政代執行が行われる。長居公園テント村住人は自分たちの思いを伝えるためにオリジナルの芝居を演じ、集まった支援者は芝居の上演を守るために協力した。長居公園仲間の会が目指したのは「文化的抵抗」であったが、実際の現場での数々の実践、インパクトをマスメディアはことごとく見落としていた。市職員によるアナウンスや、撤去作業の騒音に邪魔されて中断されながらも、芝居は何度も上演された。上演が繰り返されるうちに、静まった雰囲気の中、ついに舞台にその場の視線が集中した。しかし、正午前、その静寂を打ち破るように、舞台を取り囲んでいた支援者たちと役者たちを力づくで引き剥がし、長居公園テント村の強制撤去は終わりを告げた(とりあえずの詳細はこちらのサイト内の「代執行当日の様子」を参照)。
行政撤去以後の抗議行動など
- 2007年2月6日 長居公園から大阪市役所を目指して抗議キャラバンが出発した。体力的な限界から抗議キャラバンは天王寺公園までで解散、その後、夕方から淀屋橋にて抗議情宣が行われた。
- 2007年2月12日 NOVOXがパリの大阪市事務所に長居公園のテント撤去に抗議する要求書を提出し、3時間に渡って事務所を占拠して抗議を行った。
- 2007年2月16日 長居公園の強制撤去に対し、釜ヶ崎キリスト教協友会が大阪市に抗議声明を提出。
参考資料
長居公園仲間の会による文書
抗議文・要請書・声明など
行政代執行に関する資料
行政代執行当日の報道
- 大阪市 テント強制撤去 長居公園 500人動員(1357文字)(産経新聞) - 2007年2月
- 長居公園テント強制撤去 「どこへ行けばいいんや」 怒号、抗議の演劇も(830文字)(産経新聞) - 2007年2月
- 大阪・長居公園テント撤去 「同じことの繰り返し」周辺住民ため息(831文字)(読売新聞) - 2007年2月
- 大阪市、長居公園テント強制撤去 650人が一時もみ合い(835文字)(読売新聞) - 2007年2月
- 大阪・長居公園:野宿者テント撤去 市が代執行(398文字)(毎日新聞) - 2007年2月
- 大阪・長居公園のテント撤去:野宿テント強制撤去 世界陸上控え、市が代執行(841文字)(毎日新聞) - 2007年2月
- 大阪・長居公園のテント撤去:行政代執行 繰り返す排除と抵抗(2288文字)(毎日新聞) - 2007年2月
- 大阪・長居公園のテント撤去:市が代執行(609文字)(毎日新聞) - 2007年2月- 新聞
行政代執行翌日の報道
- 長居公園のテント強制撤去 野宿者ら抗議集会 別の公園に移動し“生活”(544文字)(産経新聞) - 2007年2月
その他
『長居公園テント村 行政代執行までの記録集』
長居公園テント村への行政代執行を受けて、記録集の作成が進んでいる。くわしくは長居公園テント村 行政代執行までの記録集の項を参照のこと。
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