「よりそいホットライン」事業を受託運営していたNPO法人「京都暮らし応援ネットワーク」の「ハラスメント」事案

当組合は、よりそいホットライン事業を受託運営していたNPO法人京都暮らし応援ネットワークで事務員として働いていたAさんから相談を受けて、京都暮らし応援ネットワークに団体交渉を申し入れてきました。

 

これまでに開催した3回の団体交渉と、団体交渉を拒否されるようになってから不当労働行為救済申立をした京都府労働委員会の手続を通じ、事態の全容が見えてきました。

 

労働委員会の経過の詳細は、労働者の人権を踏みにじる舟木浩弁護士 | ユニオンぼちぼちブログ徒に紛争を長期化させる舟木浩弁護士 | ユニオンぼちぼちブログをご覧ください。

 

現在、京都府労働委員会のみなさまのご尽力により、謝罪が盛り込まれた和解案の協議をしています。これが成立すれば、当組合が要求していたことの一つが実現されることになります。

 

当組合が要求していた経過説明も、「よりそいホットライン」事業を受託運営していたNPO法人「京都暮らし応援ネットワーク」の労働問題の経緯 | ユニオンぼちぼちブログで実現しました。

 

真相解明をして再発防止に活かしたいというのがAさんの希望であり、当組合が要求していることでもありますが、NPO法人京都暮らし応援ネットワークはそのつもりがないようです。

 

そこで、一方当事者である組合からの視点にはなりますが、できるだけ法人側の主張や見解を採り入れて、ここに事案の真相だと考えられることと、それを踏まえた見解をまとめます。

 

概要

NPO法人京都暮らし応援ネットワークでコーディネーターとして勤務していたHさんが、事務員として勤務していたAさんから「ハラスメント」を受けたと、法人理事会に訴えかけました。これを受けて、他の仕事や活動と両立できるように自由に出勤日時を決められるという約束で事務員として働き始めたAさんは、法人から出勤日時を指定されるようになり、業務内容や他の仕事の都合から指定された日時に出勤できないと伝えた上で指定以外の日時に出勤すると、法人から懲戒処分を検討しているという通告を受けました。

 

「ハラスメント」事案自体

まず、HさんがAさんから「ハラスメント」を受けたと捉えて法人理事会に訴えかけたことは尊重されるべきです。Hさんが精神的苦痛を感じていたのは事実だと思われます。この局面では、「当人がハラスメントだと感じたらハラスメントだ」という標語も有効だと考えられます。

しかし、Aさんの出勤日時を指定したり、懲戒処分を検討していると通告したりすることが、一方当事者がハラスメントと感じているからという根拠だけで許されてはなりません。

法人側は、出勤日時の指定は適法な指揮命令であり、懲戒処分を検討していると通告したのはその適法な指揮命令に従わなかったからであって、ハラスメントと関係ないと主張しています。しかし、Aさんの事務員としての雇用時に自由に出勤日時を決められると約束したかどうかの確認をせず、Aさんの業務内容や他の仕事があって勤務できない曜日時間帯を出勤簿で確認することもなく、出勤日時の指定もあいまいなまま、懲戒処分という発想になるのは、無意識的にでもAさんをハラスメント加害者として捉えていたからではないでしょうか。

 

労働委員会の手続の終盤になってから、TさんがHさんや小松潤之理事に送った不確かなメールを根拠にAさんをハラスメント加害者と名指しするという法人の態度(被申立人第3準備書面)が、この解釈を補強します。

厚生労働省が公開している「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)にもありますように、職場におけるハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処を講じることが肝要です。

本件では、法人が「ハラスメント委員会」を立ち上げたものの、事実関係の確認がなされませんでした(4月答弁書)。振り返ると、法人が事実関係の確認をしなかったという点が、大きな問題であると考えられます。

迅速かつ正確な事実確認がされていないのではっきりしたことは言い難いのですが、法人側から漏れ伝わってくることを総合すると、Hさんがハラスメントだと主張していることは、①Aさんがコーディネーター業務に手を出した、②Aさんが早口だったりペースが速かったりする、の2点だと思われます。

①については、Aさんは必ず事前に小松潤之理事(当時のコーディネーター)の指示または承認を受けて業務を行っていたので、小松潤之理事からHさんへの引き継ぎ不足に起因するものであると考えられます。

②については、性格や仕事の進め方の違いであって、客観的にハラスメントに該当する行為ではないと考えられます。しかも、Aさんは、Hさんに苦痛を与えているのであれば、早口だったりペースが速かったりすることを改めると提案していました。

 

NPO法人京都暮らし応援ネットワークの対応

上記の「ハラスメント」事案自体とは別に、京都暮らし応援ネットワークの法人としての対応をまとめます。

法人側が「事業運営に直接携わる理事が限られていた」と認めているように(被申立人第2準備書面)、法人の理事が現場を把握していなかったことが、本件の背景要因として存在しています。

法人の理事が現場を把握していれば、Aさんがハラスメント加害者であると思いこむこともなかったかもしれませんし、Aさんは月初の業務で締切に追われている、この曜日のこの時間帯は他の仕事があって出勤していない、だから他の日でもよいHコーディネーターのこの業務は振り替えよう、といったことに思いを馳せることもできたかもしれません。

もっとも、小松潤之理事(当時のコーディネーター)や藤喬代表理事(元コーディネーター)は、現場をかなりの程度把握していましたから、彼らの知見を取り入れることができていればこうならなかったのではないかとも思われます。

実際の法人理事会がどのような雰囲気なのかはわかりませんが、当組合との団体交渉で約束したことも理事会を経ると団体交渉での話し合いがなかったことにされているということが何度もあったので、理事会が適切に機能していないことが想像されます。

また、「共に社会的使命の達成を目指す関係性の中で従業員に働いてもらっており」とNPO法人の水平性を強調しながら(4月答弁書)、「第三者である従業員に対しては、事案の概略を伝えることで十分であるとの認識をもっており、ハラスメントを受けたと訴えるH氏の基本的人権に最大限配慮して詳細な経緯については、説明する必要がないと考えている」、「H氏の代替となり得る人員がいない状況において、H氏が統括コーディネーターとして働き続けられる職場環境を維持していくことは、法人の事業運営に直結する「経営問題」であった」(被申立人第2準備書面)とコーディネーターであるHさんを殊更に持ち上げる態度に、無意識的な権力性が見え隠れします。従業員に詳細な経緯説明をする必要がなく、事務員であるAさんの人権には配慮せず退職に追い込んでも構わないということなのでしょうかね。

運営会議をコーディネーターだけで開催して事務員を排除しても何も問題だと感じないというところからも、コーディネーター > 事務員というヒエラルキーが暗黙の前提とされているように思えてなりません。

強権的ではあっても事業を強力に推し進めるのであればまだ理解できなくもないのですが、NPO法人京都暮らし応援ネットワークは本件が発生した2020年度でよりそいホットライン事業をやめているので、目も当てられません。

 

これが現時点で当組合から見えている世界です。一方当事者の見方であることを改めて断っておきます。

それは違う、事実に反する、といったことがございましたら、ご指摘ください。

 

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