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生活保護制度について弁護士さんたちが声明を出しました

 生活保護の水際作戦など、違法な生活保護抑制策と闘ってこられた弁護士の皆さんが、最近騒がれた、タレントの母親の生活保護受給を奇貨として進められているバッシングに対して声明を出しました。重要な内容ですので、ここで紹介します。ぜひ、ご一読ください。

2012(平成24)年5月30日
扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために
                     生活保護問題対策全国会議
                     代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階
℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
                事務局長 弁護士 小久保 哲郎
第1 はじめに
人気お笑いタレントの母親の生活保護受給を週刊誌が報じたことを契機に,生活
保護制度と制度利用者全体に対する大バッシングが起こっている。
そこでは,扶養義務者による扶養が生活保護適用の前提条件であり,タレントの
母親が生活保護を受けていたことが不正受給であるかのような論評が見られるが,
現行生活保護法上,扶養は保護の要件ではない。息子であるタレントの対応に対
する道義的評価については価値観が分かれるところかもしれないが,本件が不正
受給の問題でないことは明かである。
また,扶養が保護の要件となっていない現行法を非難する主張に応えて,小宮山
厚生労働大臣が,「親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す」という事
実上扶養を生活保護利用の要件とする法改正を検討する考えを示す事態にまで発
展している。
しかし,生活保護利用者の息子が人気タレントとなって多額の収入を得るに至る
という,極めて例外的な事例を根拠に,現在改正の在り方を関係審議会に諮問中
の厚生労働大臣が,法改正にまで言及すること自体,軽率のそしりを免れない。
そもそも,扶養が保護の要件とされていないのには理由があるのであり,これは
先進諸外国にも共通しているところである。扶養を保護の要件とすることは,救
貧法時代の前近代社会に回帰する大「改正」であり,ただでさえ「スティグマ
(恥の烙印)」が強くて利用しにくい生活保護制度をほとんど利用できないもの
とし,餓死・孤立死・自殺の増加を招くことが必至である。
まずは,民法上の扶養義務の範囲と程度はどのようになっているのか,現行生活
保護制度における扶養義務の取扱いはどのようになっているのか,先進諸外国の
制度はどうなのかについて,正確な理解をした上で,報道や議論をしていただき
たく,本書面を発表する次第である。
第2 民法上の扶養義務者の範囲と程度について
1 民法上の扶養義務者の範囲
~三親等内の親族が扶養義務を負うのは極めて例外的な場合である。
扶養義務の根拠条文である民法752条には「夫婦は同居し,互いに協 力し扶
助しなければならない。」,同法877条1項には,「直系血族及び兄弟姉妹は,
互いに扶養をする義務がある。」,同条2項には「家庭裁判所は,特別の事情が
あるときは,前項に規定する場合の外,三親等内の親族間においても扶養の義務
を負わせることができる。」と定められている。
同法877条1項に定められた直系血族と兄弟姉妹が絶対的扶養義務者と呼ばれ
ているのに対し,同条2項に定められた三親等内の親族は相対的扶養義務者と呼
ばれ,家庭裁判所が「特別の事情」があると認めた例外的な場合だけ扶養義務を
負うものとされている。
判例上も,三親等内の親族に扶養義務を認めるのは,それを相当とされる程度の
経済的対価を得ている場合,高度の道義的恩恵を得ている場合,同居者である場
合等に,できる限り限定して解されている(新版注釈民法(25)771頁)。
2 求められる扶養の程度
~強い扶養義務を負うのは,夫婦と未成熟の子に対する親だけである。
~兄弟姉妹や成人した子の老親に対する扶養義務は,「義務者がその者の社会的
地位にふさわしい生活を成り立たせたうえでなお余裕があれば援助する義務」に
とどまる。
~具体的な扶養の方法程度は,まずは当事者の協議で決める。
~協議が調わないときは家庭裁判所が決めるが,個別ケースに応じて様々な事情
を考慮するので一律機械的にはじき出されるものではない。
求められる扶養の程度について,民法上の通説は次のように解している。
① 夫婦間及び親の未成熟の子に対する関係…生活保持義務関係
生活保持義務とは,扶養義務者が文化的な最低限度の生活水準を維持した上で余
力があれば自身と同程度の生活を保障する義務である。
②  ①を除く直系血族及び兄弟姉妹…生活扶助義務関係
生活扶助義務とは,扶養義務者と同居の家族がその者の社会的地位にふさわしい
生活を成り立たせた上でなお余裕があれば援助する義務である。
つまり,強い扶養義務を負うのは,夫婦と未成熟の子に対する親だけで あり,
兄弟姉妹同士,成人した子の老親に対する義務(今回のタレントの事例),親の
成人した子に対する義務は,「義務者がその者の社会的地位にふさわしい生活を
成り立たせたうえでなお余裕があれば援助する義務」にとどまる。
そして,民法879条は,「扶養の程度又は方法について,当事者間に協議が調
わないとき,又は協議することができないときは,扶養権利者の需要,扶養義務
者の資力その他一切の事情を考慮して,家庭裁判所が,これを定める」と規定し
ている。つまり,親族間の援助に関することであるから,具体的な扶養の程度又
は方法の決定にあたっては,国家による介入は控え,まずは当事者間の協議に委
ねて,その意思を尊重することとしている。
協議が調わない場合には家庭裁判所がこれを定めるが,その場合には,権利者の
需要(困窮度),義務者の資力だけでなく,権利者の落ち度,扶養に関する合意
(当事者の意思),両者の関係の強弱・濃淡,当該地域の扶養慣行,社会保障制
度の利用状況や利用可能性等を総合考慮して決するものとされており,機械的・
一律に金額が算定されるようなものではない(前掲796頁)。
 3 扶養義務を過度に強調することは現代社会に合わない
そもそも,民法が親族扶養を定めていること自体,その根拠は明確でないとされ
ている(新版注釈民法(25)726頁)。
一応,親族共同生活体という観念上の存在が法的に承認され,その限度で生活共
同の義務が認められているものと考えられているが,「無縁社会」とまでいわれ
る現在,この「親族共同生活体」という観念がますます実体を欠くものとなって
いることは明らかである。すなわち,そもそも,民法上の扶養義務を強調するこ
と自体,現代社会の実態と合わないともいえる。
「近時,少子化,核家族化とともに兄弟姉妹の数も少なく,これらの者が成人し
た後隣居生活をすることは稀であり,それぞれ離れて独立の生活を送っている場
合には交流も少なくなる」ことから,兄弟姉妹については,三親等内の親族同様,
「特別の事情」がある場合に家庭裁判所の審判によって扶養義務を負わせるよう
にすべきとの見解もある(同前771頁)。
後述のように,先進諸国では,別居の兄弟姉妹はもちろん,別居の成人親子間に
おいて扶養義務を課す例はまれであることからしても,立法論としては,兄弟姉
妹については扶養義務を廃止することも十分に検討に値する。
また,裁判所職員総合研究所監修のテキストは,「民法の認める親族的扶養の範
囲は,近代法に類例をみないほど広範であり,特に現実的共同生活をしない親族
にまで扶養義務を課していることを考えると,私的扶養優先の原則の適用に際し
ては,特に慎重な考慮を払うとともに公的扶助を整備強化することによってその
補充性を緩和し,できるだけ私的扶養の機会を少なくすることが望ましい。」
(司法協会編『親族法相続法講義案(6訂補訂版)』195頁)と述べているが,
後に述べる先進諸外国の制度との対比からも真っ当な方向性といえる。
第3 扶養義務と生活保護との関係について
 1 扶養義務者による扶養は保護の要件ではない
   保護の要件について定めた生活保護法4条1項の規定は,「保護は,生活
に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限
度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めている。こ
れに対し,生活保護法4条2項は,「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優
先して行われるものとする」と定め,あえて「要件として」という文言を使って
いない。
「扶養が保護に優先する」とは,保護受給者に対して実際に扶養援助(仕送り等)
が行われた場合は収入認定して,その援助の金額の分だけ保護費を減額するとい
う意味であり,扶養義務者による扶養は保護の前提条件とはされていない。
この点は,厚生労働省も,自公政権時代の2008年に「扶養が保護の要件であ
るかのごとく説明を行い,その結果,保護の申請を諦めさせるようなことがあれ
ば,これも申請権の侵害にあたるおそれがあるので留意されたい。」との通知を
発出している(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知「生
活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」第9の2(『生活保護手帳2
011年版』288頁))。
2 扶養を保護の要件とするのは前近代社会への回帰
 ~旧救護法・旧生活保護法は「イエ(家)制度」を守るため扶養を保護の要件
としていたが,現行生活保護法は,先進諸国の例にならい,扶養を保護の要件か
ら外した。
1929年制定の救護法では,扶養義務者に扶養能力があるときは,まずは扶養
義務者が扶養しなければならないとして,扶養が保護の要件とされていた。その
趣旨は,家族制度・隣保制度が前提とされていたので,もし民法の認める扶養義
務に対して何ら考慮を払わず,国家,公共団体が救護したとすれば,家制度はた
ちまち破壊され,救護は濫救となり弊害が続出することにあるとされていた(新
版注釈民法(25)756頁)。
そして,1946年制定の旧生活保護法でも,「扶養義務者が扶養をなしうる者」
は実際に扶養援助がなされていなくても保護の要件を欠くとされていたが,19
50年制定の現行生活保護法ではこの欠格条項は撤廃されたのである。
   現行生活保護法制定当時の厚生省保護課長であった小山進次郎は,その趣
旨を次のように説明している。
   「生活保護法による保護と民法上の扶養との関係については,旧法は,こ
れを保護を受ける資格に関連させて規定したが,新法においては,これを避け,
単に民法上の扶養が生活保護に優先して行わるべきだという建前を規定するに止
めた。一般に公的扶助と私法的扶養との関係については,これを関係づける方法
に三つの型がある。第一の型は,私法的扶養によってカバーされる領域を公的扶
助の関与外に置き,前者の履行を刑罰によって担保しようとするものである。第
二の型は,私法的扶養によって扶養を受け得る筈の条件のある者に公的扶助を受
ける資格を与えないものである。第三の型は,公的扶助に優先して私法的扶養が
事実上行われることを期待しつゝも,これを成法上の問題とすることなく,単に
事実上扶養が行われたときにこれを被扶助者の収入として取り扱うものである。
而して,先進国の制度は,概ねこの配列の順序で段階的に発展してきているが,
旧法は第二の類型に,新法は第三の類型に属するものと見ることができるであろ
う。」(小山進次郎『改訂増補生活保護法の解釈と運用』119頁)
   すなわち,1950年の段階で,私法的扶養を強調することは封建的で時
代錯誤であるから,現行制度のように改めたものを,現代において扶養を生活保
護の要件とすることは,60年以上も前の前近代的時代に逆行することになる。
3 扶養義務を果たさない扶養義務者に対する費用徴収
  生活保護法77条1項は,「被保護者に対して民法の規定により扶養の義務
を履行しなければならない者があるときは,その義務の範囲内において,保護費
を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から
徴収することができる。」と定めている。そして,同条2項は,「前項の場合に
おいて,扶養義務者の負担すべき額について,保護の実施機関と扶養義務者の間
に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,保護の実施機関
の申立により家庭裁判所が,これを定める。」と定めている。
このように,生活保護法は,扶養義務者が真に富裕であるにもかかわらず援助し
ないケースでは,扶養義務者から費用を徴取できるとの規定をおいている。した
がって,現行法でも,明らかに多額の収入や資産を有しているが扶養を行わない
扶養義務者に対しては,この規定を利用して費用徴収をすることができる。しか
し,この規定を一般に広く適用することは,事実上扶養を保護の要件にするのと
類似の効果を招き,後に述べる弊害をもたらす危険があるので望ましくない。
報道によれば,今回のお笑いタレントのケースでは,高収入を得るようになって
から福祉事務所と協議のうえ仕送り額を決めて仕送りをし,今年に入ってから増
額もしたということである。タレントの年収と仕送り額によっては,道義上その
金額の妥当性が問題になる可能性はあるが,前述のとおり,成人した子の老親に
対する扶養義務は比較的弱い義務であり,具体的な扶養の金額は,当事者の意思
も含めた様々な事情を総合考慮して決すべきものなので,額の当否を一概に判断
するのは困難である。
いずれにせよ,福祉事務所と協議のうえ仕送り額が決められ,そのとおりの仕送
りがなされていたということからすれば,少なくともタレントの母親の生活保護
受給が「不正受給」にあたるものでないことは明らかである。
4 生活保護実務上の扶養義務の取り扱い
(1)違法な水際作戦の常套手段 ~後を絶たない餓死事件
    前述のとおり,本来,扶養は保護の要件ではないが,現場では,保護の
要件であるかのように説明して申請を断念させる「水際作戦」の常套手段とされ
ている。
    日弁連が2006年に実施した全国一斉生活保護110番の結果では,
違法な水際作戦の可能性が高いと判断された118件のうち,「扶養義務者に扶
養してもらいなさい」という対応が49件と最も多かった。
    古くは,1987年1月,札幌市白石区の3人の子どもを持つ母親が,
再三福祉事務所に保護を申請したにもかかわらず,福祉事務所が,「働けば何とか
自活できるはず」「離婚した前夫(子の父)の扶養の意思の有無を書面にしても
らえ」などと主張して,保護申請として処理せず,放置した結果,「餓死」したと
いう,余りにも有名な事件がある。
    また,「保護行政の優等生」「厚生労働省の直轄地」と言われた北九州
市において,2005年から3年連続で生活保護をめぐる餓死事件が発生したが,
2007年の餓死事件は,生活保護の辞退を強要された52歳の男性が「おにぎ
り食べたい」という日記を残して死亡したためマスコミでも大きく報道された。
このうち,2005年に北九州市八幡東区で起きた孤独死事件は,生前,生活保
護の申請に何度も福祉事務所を訪れた被害者に,福祉事務所の担当者が,兄弟姉
妹による扶養の可能性がないか確認してから来るようにと違法に追い返したこと
が原因であった。また,2006年の北九州市門司区での餓死事件も,福祉事務
所の担当者が,子どもに養ってもらうようにとして違法に申請を拒絶したことが
原因で起きた。
    扶養義務を利用した追い返しは,水際作戦の常套手段となっており,少
なくない餓死事件も引き起こしているのである。
(2)扶養照会自体が保護申請上の大きなハードルになっている
   現行生活保護実務上,生活保護の申請があると福祉事務所は,直系血族
(親子)と兄弟姉妹に対して,扶養が可能か否かについての照会文書(扶養照会)
を送付する。扶養が可能であるとの回答が返ってくれば,具体的に幾らの仕送り
が可能であるかの協議を行い,実際に仕送りがされた額を収入認定し,その分の
保護費を減額するが,そうでない場合には,当該世帯の最低生活費を支給するこ
とになる。
しかし,それでも扶養照会の存在は,保護申請をためらわせる大きなハードルに
なっている。疎遠になっている親・兄弟姉妹に,生活保護を利用するほど困窮し
ているという“恥”を知らせたくないというプライドや意地から,生活保護の利用
を拒絶し,過酷なホームレス生活を続けている人なども少なくない。
第4 先進諸外国の扶養義務の範囲と生活保護(公的扶助)制度との関係
 1 イギリス
 (1)扶養義務者の範囲
    配偶者間(事実婚を含む)及び未成熟子(16歳未満)に対する親。い
ずれも同居が前提。
 (2)扶養義務と公的扶助との関係
    上記のとおり同居が前提であるので,世帯の問題として把握されること
になり,そもそも「優先」関係すら問題にならない。
成人した子の老親に対する扶養義務もないので,今回のお笑いタレントのような
ケースは問題になりえず,イギリス人に説明しても何が問題なのかさえ理解でき
ないであろう。
 2 ドイツ
(1)扶養義務者の範囲
配偶者間,親子間及びその他家計を同一にする同居者。但し,高齢者,障害者に
対する扶養義務は,年10万ユーロ(約1200万円)を超える収入がある親又
は子。
高齢者や障害児を持つ世帯の貧困が社会問題となり、2003年に導入された
「基本生計保障」制度において子と親の資産を合算した場合の保有限度を10万
ユーロと高く設定することによって、事実上扶養義務の範囲を狭め、上記課題の
解消を図った。
(2)扶養義務と公的扶助との関係
同居していない扶養義務者から実際に扶養が行われれば収入認定の対象となる。
日本と同様,扶養は保護の要件ではなく,優先関係にあると言える。
同居していない扶養義務者が扶養を行わない場合,扶養請求権を実施機関に移転
させて償還請求をすることができるが(日本の生活保護法77条と類似の規定),
扶養権利者本人(未成年者は除く)が請求を望まない場合は例外とされている。
すなわち,扶養を求めるかどうかを一義的には保護申請者に委ねており,実施機
関は,当事者の意に反して扶養義務者に対する償還請求をすることはできない。
 3 スウェーデン
(1)民法上の扶養義務者の範囲
配偶者間(事実婚(Sanbo)含む)及び未成熟子(18歳未満)に対する親。
(2)扶養義務と公的扶助との関係
   イギリス同様世帯の問題であり,扶養の優先関係すら問題にならない。
    高齢者が,生計援助(生活保護)の申請を行う場合,子ども夫婦と同居
している場合であっても,高齢者自身の生活費と家賃(高齢者一人の分)が援助
の要否判定の基礎となり,子どもに親の扶養(金銭面・介護面とも)をする義務
を課すことはない。ましてや,同居していない子どもに扶養義務を課すことなど
あり得ない。
    したがって,今回のお笑いタレントのようなケースが問題になることは
あり得ない。なお,スウェーデンでは,最低保障年金があり,年金額が低い場合
は住宅手当などが加算される仕組みになっているため,高齢者が生計援助(生活
保護)を受ける必要性があるケース自体がごく稀である。
 4 フランス
(1)扶養義務者の範囲
   夫婦間と未成年(事実上 25 歳未満)の子どもに対する親
(2)扶養義務と公的扶助の関係
   イギリス,スウェーデン同様,優先関係すら問題にならない。
第5 扶養義務の強調は餓死・孤立死を招く
   小宮山大臣が言及した「扶養義務者に扶養困難な理由の証明義務を課す」
とか,一部で主張されているように福祉事務所の調査権限を強化し,扶養義務者
の資産も含めて金融機関に回答義務を課すような法改正がなされれば,どうなる
であろうか。
   生活に困窮した人が,福祉事務所に生活保護の申請に行くと,親兄弟すべ
ての資産や収入が強制的に明らかにされ,申請者本人が望まなくても,親兄弟は
無理な仕送りを迫られることになるであろう。これはほとんどの場合,親兄弟に
とって歓迎せざることであって,親族関係は,むしろ決定的に悪化し破壊される
であろう。
   あるいは,福祉事務所の窓口では,25年前の札幌市白石区での餓死事件
のように,申請者に対し,「扶養義務者の扶養できない旨の証明書」をもらって
くるようにと述べて追い返す水際作戦が横行するであろうが,法改正がなされれ
ば,これは合法として容認され,餓死・孤独死・自殺事件が頻発することになる
であろう。
そもそも,生活に困窮している人は,親族もまた困窮していることが多い上,さ
まざまな葛藤の中で親族間の交際が途絶えていることも多い。先に述べたとおり,
現状でさえ,扶養照会の存在を理由に保護申請をためらう人が多数存在するのに,
扶養が前提条件とされれば,前記のような親族間での軋轢をおそれて申請を断念
する人は飛躍的に増大することは間違いがない。
日本の生活保護利用率は1.6%に過ぎず,現状でも先進諸国の中では異常な低
さである(ドイツ9.7%,イギリス9.3%,フランス5.7%)。この状況
に加えて,さらに間口を狭める制度改革がなされれば,確実に餓死・孤立死・自
殺が増える。
これは,緩慢なる死刑である。しかも,死刑囚ですら糧食を保障されているのに,
それさえ奪うという意味では死刑よりも残虐な刑罰である。何人もそのような刑
罰を受けるいわれはないし,何人もそのような刑罰を科す権限はない。制度改革
を進めた政治家や報道機関は,死者に対してどのような責任がとれるのか,冷静
になって慎重に検討することが今,求められている。
かつて,2006年3月4日,大阪市立大学における日独ホームレス問題国際シ
ンポジウムにおいて,前ドイツ連邦副議長であるアイティエ・フォルマー氏は,
冒頭「その社会の質は,最も弱き人がどう扱われるかによって決定される」と挨
拶され,「貧困者への施策を国政の最も重要な施策として位置づけ,国政を運用し
てきた」ことを強調された。
日本においても,政治と報道にどのような「貧困政策」を盛り込むのかが,その
「質」のあり方とともに問われている。

以 上

5月29日(火)第6回行政書士学習会のお知らせ


第6回行政書士学習会のお知らせです。
日時:5月29日(火) 13時50分(14時開始、17時終了予定)
場所:京都大学時計台前集合
内容:民法(物権)
*今回は月曜日ではなく火曜日です
民法にもなじんできました。この日に物権を取り上げてひとまず民法はおしまいです。その後は行政法に入ります。
この会では理論だけでなく、登記の取り方、不動産屋との交渉の仕方、家事調停の使い方などを現物を交えて学ぶことができるのがありがたいです。組合活動や日常生活ですぐに活用できる知識です。
学習部企画の一環なので、組合員には交通費が支給されます。また、組合員でなくても参加できます。みなさまお誘いあわせの上お越しください。

5月の定例カフェ


昨日は第四土曜日ということでユニオンぼちぼちの定例カフェを京都事務所でしました。
5月カフェ
Sさんがメインで作ってくれたキーマカレーは本格的でした。オニオンスライスを食べる直前にかけるのが一押しだそうです。自家製梅酒の差し入れもあり、豪華なカフェとなりました。
それでも会費は一人200円ちょっとですみました。ありがたいことです。
毎月第四土曜日にはこうしたカフェをしていますので、お気軽にお越しください。組合員には交通費も支給されます。

労働者とメンタルヘルス

 あす、表題の学習会が開かれます。京都方面の方はよかったらお越しください。
 最近、職場でのパワハラやセクハラが増え、メンタルヘルス問題が深刻になっています。自殺者も減ることもなく、年間3万人という状況が4年も続いています。
 厚生労働省も、精神疾患を「5大疾病」の1つに加え、取り組みを強化し始めました。職場復帰プログラムを作るなど、対策を進めています。しかし、中小企業の多くは、当事者を職場から排除することしか考えず、職場環境を改善しようとはしません。
 労働組合も、メンタルの問題を抱えた労働者とどう向き合うか、手探りの状態です。
 そこで、私たち京都労働安全衛生連絡会議は、こうした問題について専門家のかたから解説していただく学習会を企画しました。
 講師に<医療法人 竹村診療所>院長の竹村隆太先生をお招きして、精神疾患について、またメンタルヘルス問題への対応のしかたなどについて、お話していただきます。

タイトル 専門医と話す労働者とメンタルヘルスの学習会
講師   竹村隆太(医療法人 竹村診療所 院長)
日時   2012年5月24日(木)18:30~20:30
場所   京都市東山いきいき市民活動センター
https://genki365.net/gnkk14/pub/content_image.php?fname=8720_3_1.jpg
主催   京都労働安全衛生連絡会議 075-691-6191

第12回手芸学習会

5月17日(木)、第12回手芸学習会が行われました。
今回は、コミュニティユニオン全国交流集会に向けての話をしたり、ミシンが初登場したり。
参加人数は7名でした。
ミシンはお借りしたものなので、上糸の通し方がわからず。
「どうやって通すんだろう?」と試行錯誤。
(ちゃんと取扱説明書があったのに最初は気付きませんでした。汗)

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組合員、上糸を通す、の図。
後から取扱説明書の存在に気付きましたが、見なくてもちゃんと合っていたという奇跡。すごい。
さぁ、ミシンを使いましょう。フットコントローラーもついていたので、使いやすい!
貸していただいて、ありがとうございます。

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ジーパンがこんなに素敵にリメイクされました!
開いていた穴も隠れたし、ワッペンに書かれている言葉も素敵だし、この写真を見るとニヤニヤしてしまうのは私だけでしょうか。
ワッペンは、きょうとユニオンさんが作ったものをいただきました。ありがとうございます。

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ちょっと一休みしてパンでも…。
(ちなみに今回の私の作品はコレです…。左側がベジタリアン対応パン、右側がもちもちチーズパンです。)
さて、講師が作っていたスカーフは、

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かなり大きくなってきています!
完成が待ち遠しいですね~^^

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こちらは製作途中の葉っぱの形のアクリルたわし。
緑ではなく、「茶色」というのがまたエエ味を出しています。

画像-03450001
なかなか複雑な編み方で、私は終始「?」な感じでした。今度挑戦してみよう。
手芸学習会では、アクリルたわしや着物リメイク、Tシャツリメイク、穴の開いたズボンの修理、手作りマスクなどなど、色々楽しめますので、ぜひご参加ください。
次回手芸学習会は、6月14日(木)14時~ぼちぼち京都事務所にて行われます。
なお、ぼちぼち組合員には交通費が支給されます。

5月21日(月)に労働相談マニュアル作成会議をします


5月21日に労働相談マニュアル作成の会議があります。会議と言っても内容は学習会と話し合いです。労働相談をしたことがある、ないに関わらず、興味があれば誰でも参加してほしいです。今は労災、労働条件の不利益変更といった項目別にマニュアルを作っているところです。
日時:5月21日17時〜
場所:ぼちぼち大阪事務所(医療連絡会議事務所)
大阪市営地下鉄動物園前駅9番出口からすぐ
もしくはJR環状線新今宮駅から徒歩五分
*場所がわかりづらければ06-6647-8278までお電話ください。

5.19反貧困ネット京都集会「反貧困と労働×働きの未来」


反貧困ネット京都集会「反貧困と労働×働きの未来」のお知らせです。ユニオンぼちぼちからも発言者を予定しております。
----------
5.19集会「反貧困と労働×働きの未来」
仕事の保障ができない時代。雇われて労働してお金を得て生活する。あたりまえ
がこわれつつあります。
けれども女性や障害者はもっと前から、賃労働の周辺や外におかれてきました。
家事、育児、介護、NPOなどの社会的活動は、無償だったり低賃金だったりと
低く扱われてきました。
反貧困ネットワーク京都は、賃労働のはしっこにある〈働き〉から、労働を考えなおす
連続学習会を企画してきました。
今回の集会はその集大成です。
日時:2012年5月19日(土)13:30〜16:30(開場13:15)
会場:ひと・まち交流館 京都 2階大会議室
(定員100名・事前申込み不要・参加費300円)
発言予定者:
井上摩耶子(ウィメンズカウンセリング京都)
橋口昌治(ユニオンぼちぼち)
矢吹文敏(日本自立生活センター)
山森亮(同志社大学)
渡邉琢(かりん燈―万人の所得保障を求める介助者の会)ほか
主催:反貧困ネットワーク京都
お問い合わせ:
Tel:075-241-2244 / Fax:075-241-1661(担当 舟木)
*手話・要約筆記など必要とされる方は、
5月10日までに主催者にご連絡ください。

5.18西成医療扶助特区問題の意見交換会@釜ヶ崎


西成医療扶助特区問題の意見交換会のお知らせです。
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5月18日、釜ヶ崎の市民館で下記勉強会を開催します。
是非多数ご参集ください。
◆西成区生活保護医療問題・意見交換会◆医療機関・薬局の登録制度で現場はどうなるの!?
 大阪市は、西成特区構想の一環として、西成区の生活保護受給者の医療機関・薬局の登録制度を8月から始めるとしています。
 あらかじめ登録証(医療券とは別)に「一診療科につき一医療機関」「一受給者一薬局」を登録して限定し、主治医の紹介状があっても担当ケースワーカーの了解が得られない限り、それ以外の医療機関・薬局の利用を認めないという制度が考えられているようです。
・急なケガや病気のとき、きちんと受診できるのか?
・かかっている医者が信頼できないときに医者を変えたり、別の医者の意見(セカンドオピニオン)を聞くことができるのか?
・医療費抑制のために必要な医療が受けられなくなり、病気が悪化してしまわないか?
 さまざまな疑問や不安があります。
 まずは制度の内容を知り、どんな問題点があるかについて現場からの意見交換を しませんか?
発言者
● 医療機関の立場から
渡辺征二さん(大阪府保険医協会事務局)
● 法律家の立場から
金喜朝さん(弁護士、大阪弁護士会人権擁護委員会医療部会所属)
● 現場の支援者の立場から
大谷隆夫さん(釜ヶ崎医療連絡会議)
本間全さん(ふるさとの家)
生田武志さん(野宿者ネットワーク)
会場からの発言も大歓迎です。
《日時》2012年5月18日(金)午後6時30分〜
《場所》西成市民館
大阪市西成区萩之茶屋2丁目9−1 (電話06-6633-7200)
《参加費》無料
主催:西成・生活保護医療扶助特区問題を考える会
問合せ先:06−6363−3310 あかり法律事務所 弁護士小久保哲郎

ユニオンぼちぼち5月学習会「発達障がいってなに?どう向き合ったらいいの?」

皆さん、連続学習企画の告知が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。
下記の通り日程と場所の段取りができましたので、宜しくお願い申し上げます。
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『発達障がいってなに? どう向き合ったらいいの?』
日程・2012年5月25日(金)18:30~20:30ぐらい迄
場所・大阪市立中央区民センター

〒541-8518
大阪市中央区久太郎町1-2-27
TEL.06-6267-0201
FAX.06-6267-0950
http://osakacommunity.jp/chuo
大阪市営地下鉄堺筋線または中央線「堺筋本町」駅下車3番出口から東へ100m
中央区役所正面の東側階段またはエレベータを上がった2階の和室
□講師:西尾さゆりさん
□司会:山崎洋

 近ごろ「広汎性発達障害(アスペルガー、自閉症)」と呼ばれる「病」が、ようやく取り沙汰さ
れるようになってきました。「病」と「」つきで記したのは、まるで発達障がいが悪いことのよ
うにいわれている現状が未だにあるからです。
 今年の5月7日に「大阪維新の会」市議団は「家庭教育支援条例案」なるものを提出し、そのな
かで発達障がいの原因を「親の愛情不足によるもの」と一方的に決めつけ、主に発達障がいの児
童を抱える父母から怒りの抗議を浴びました。
 流行り言葉で「KY(空気読めない)」というものがあります。少しでも周囲から浮いたりして
はダメ、また必要以上に周囲と同調した意見を言わなくてはダメと強制されているみたいで、物
凄く息苦しさを感じる言葉です。
 確かに家族や他人と協調することは大切なことですが、必要以上にコミュニケーション能力を
求められ、必要以上にスピードを求められている不自由な今の社会では、私たちの側が「健全さ」
を保つことが不可能になってきていると思います。また労働の形態と内容も、近年は過剰な営業
力を求められるなどの多様化、複雑化がなされ、例えば一つの事柄に長けていたとしても不充分
と認定されてしまい、私たちの生き方や生活を圧迫しているのかも知れません。
 今回の学習企画は、大学生時にボランティアで発達障がいを抱えるとされる児童と接してきた
西尾さゆりさんを講師に迎え、「いったい発達障がいって何だろう?」「どう向き合うの?」と
いう観点から、そのプラス面もマイナス面も含めてざっくばらんに話し合っていきたいと思いま
す。
 皆様、是非ともお誘いあわせの上、ご参加ください。

※ユニオンぼちぼちの組合員以外の方でも参加できます。
※ユニオンぼちぼちの組合員に限り、交通費が支給されます。