生活保護・母子加算復活法案、与党の審議拒否に遺憾の意を表明する共同声明
与党の審議拒否は遺憾である
生活保護を受けるひとり親世帯等に支給されてきた母子加算が本年4月1日をもって完全に廃止されたことを受け、本年6月4日、野党4党の共同提案により母子加算復活法案が衆議院に提出された。しかし、与党が同法案の審議入りを受け入れなかったため、衆議院に提出された法案は撤回され、今月16日、改めて野党4党から参議院に法案が提出された。そして、本日、参議院厚生労働委員会において、審議が行われ、野党4党の賛成多数で可決された。
私たちは、これを歓迎し、同法案が引き続き参議院本会議、衆議院においても可決され、成立することを期待するものであるが、与党(自民党・公明党)が、本日の審議への出席を拒否したことについては、強い懸念と遺憾の意を表明する。
「有意でない統計」:加算廃止の正当性は既に瓦解
厚生労働大臣が母子加算を廃止した主な論拠は、母子加算を加えた被保護母子世帯の生活扶助基準額が一般勤労母子世帯の消費支出額よりも高いという点にあった。
ところが、本年6月22日の政府答弁において、政府は、上記結論を導くにあたって比較対象とされた一般勤労母子世帯(第Ⅲ-5分位)のサンプル調査件数につき、「母子・子供一人」の場合が32世帯、「母子・子供二人」の場合が57世帯にすぎないことを認め、これら「資料の数値が統計的に有意なものであるか確認できない」と答弁したのである。
この統計データに信頼性がないことはかねてから指摘されてきたところであるが、上記答弁によって、あろうことか、それを厚労省自体が自認したのである。「統計的に有意でない数値」を振りかざして加算廃止を強行した厚労省の姿勢は厳しく指弾されなければならず、母子加算廃止の正当性はもはや根底から瓦解したと言わざるを得ない。
母子加算廃止の「代償措置」はまやかし
また、厚労省は、就労促進費の支給など総合的な子育て支援策が母子加算廃止の代償措置として機能していると説明し、与党もこれに沿った見解を表明している。
しかしながら、就労促進費は最大でも1万円で、およそ2万3千円であった母子加算額に遠く及ばないし、約4割の障害・傷病などによって働くことのできない世帯は、そもそも対象にならない。その他厚労省が挙げる「障害者加算」「教育扶助」「高等学校等就学費」は、いずれも母子加算とは全く異なる目的で母子家庭に限らない生活保護受給世帯を対象にかねてから支給されてきたものである。
いずれにせよ、これらの施策が母子加算廃止の代償措置となりえないことは明らかであり、与党がこうした「まやかしの説明」を鵜呑みにする立場をとり続けるとすれば、その責任は重いと言わざるを得ない。
「社会保障費抑制方針の撤回」と一貫しない政策態度
そもそも、我が国の母子世帯の生活実態に目を向けると、すでに母子世帯の約85%は就労いるにもかかわらず、平均就労収入は年間で約171万円にすぎない。また、等価可処分所得の中央値の50%を貧困と定義したとき、全世帯の子ども貧困率が15%であるのに対し、母子世帯の子どもの貧困率は66%に達すると指摘されている。
このように、ひとり親世帯に貧困が集中している実態を無視し、「低い方に合わせる」手法で生活保護基準を引き下げれば、際限なき貧困スパイラルに陥り、憲法25条によって保障された生存権が骨抜きとなる。
折しも、23日の「骨太の方針2009」の了承にあたっては、これまでの「社会保障費毎年2200億円抑制方針」の撤回が合意されたと報道されている。政府が真に政策転換をするのであれば、まずは、予算規模で90億円に過ぎない母子加算を復活させるべきである。「社会保障費抑制方針の撤回」と言いながら、その一方で母子加算復活法案の審議を拒否するというのでは、政策態度が一貫せず、政策転換の「本気度」にも疑問を抱かざるを得ない。
まとめ
私たちは、政府与党が、審議拒否の方針を改めて審議に応じ、人道的見地から超党派で母子加算復活法案を可決成立させるとともに、児童扶養手当の拡充などひとり親世帯に対する子育て支援策を講じることを、改めて強く求めるものである。
2009年6月25日
生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾 藤 廣 喜
生存権裁判全国弁護団 弁護団長 竹 下 義 樹
全国生活保護裁判連絡会 共同代表 藤 原 精 吾
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長 稲 葉 剛
全国生活と健康を守る会連合会 会 長 松 岡 恒 雄
東海生活保護利用支援ネットワーク 代表幹事 内 河 惠 一
反貧困ネットワーク埼玉 代 表 藤 田 孝 典
特定非営利活動法人ほっとポット 代表理事 藤 田 孝 典
愛知派遣村実行委員会 実行委員長 藤 井 克 彦
笹島診療所 所 長 佐 藤 光
生活保護支援九州ネットワーク 代 表 永 尾 廣 久
NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西 理事長 神 原 文 子
全国クレジット・サラ金問題対策協議会 代表幹事 木 村 達 也
一般社団法人 自立生活サポートセンターこんぱす 代表 國 師 洋 典
関西非正規等労働組合・ユニオンぼちぼち 委員長 橋 口 昌 治
釜ヶ崎直接行動隊 隊長 阪 口 浩 一
近畿生活保護支援法律家ネットワーク 共同代表 辰 巳 裕 規
全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会 会長 澤 口 宣 男
反貧困ネットワーク広島 代表 山 田 延 廣
月別アーカイブ: 2009年6月
就職ガイダンス番外編「そこそこ働いて生きてきた」
ユニオンぼちぼちの組合員が話します!
就職ガイダンス番外編 第一回
「そこそこ働いて生きてきた~労働に関する法律のツボ~」
当たり前の事だけど、皆が就職出来るわけではない。今回の就職ガイダンスは、肯定的フリーター入門である。世界はフリーターが回している。フリーターが作り、フリーターが売り、フリーターが買う。京都精華大学の職員も6割が非正規雇用である。労働形態や労働を取り巻く法律や制度について現状や実態、今後の展望について講話を行う。内定者、就職活動中の人にも絶対役立つ労働法入門!
お題。
「就活から解放されて」
「そこそこ働いて生き抜く為の労働法の知恵」
議論、質問、大歓迎。この機会に是非理解を深めましょう。
ゲスト:
竹村正人(詩人・介護職・バーテン・良心的就活拒否者)
高橋慎一(大学院卒・フリーター・労働組合書記次長)
お二人に講話をしていただきます。
日時:6月29日(月) 18:00~
場所:京都精華大学食堂前広場
タダ、学生以外も歓迎、非常勤職員/非常勤講師歓迎
主催:京都精華大学社会科学研究会
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<主催 派遣労働ネットワーク関西>
派遣ネット関西(http://homepage2.nifty.com/haken-nk/)には、地域の労働組合やユニオン(個人加盟労組)などが参加しています。
派遣スタッフの相談受付、派遣法の学習会などを行っています。
また、行政や業界団体への申し入れを行い、派遣スタッフの権利を向上する取り組みを行っています。
お問い合わせ:
全港湾建設支部 06-6572-2105(青木)
なにわユニオン 06-6942-0219(中村)
立命館大学の労働者代表選出選挙の結果
今回の選挙は、非正規労働者の立候補者が1名、正職員の組合から1名と一騎打ちでした。
結果は正規陣営の勝利でしたが、非正規陣営が4割の票を獲得するなど(白票を加えれば当選でした)、こちら側の躍進が目立つ結果となりました。
「自分たち非正規の労働条件を当事者のいないところで決めないでほしい」
という切実な声が反映されたものではないでしょうか。
投票していただいた方々、関心を持っていただいている方々、どうもありがとうございました!
詳しくはこちら↓
非正規候補大躍進!――労働者代表選出選挙結果