月別アーカイブ: 2012年9月

権利と聞いて何をイメージしますか?

ユニオンぼちぼち リバティ分会(大阪人権博物館学芸課・教育普及課分会)
 https://twitter.com/union_liberty
権利と聞いて何をイメージしますか?
 来館者にこの質問をすると、その答えからはいくつかの傾向がみえてきます。
 大人では、「人が生まれながらにもつ権利」や「人が人として生きる大切なもの」など権利そのものの特徴をあらわしたような答えや、「選挙権、生存権、肖像権、財産権」などといった個別の権利について書いてくれる人が多い感じです。
 またどうしてか、一定数の人が「義務」と書くのも大人によくみられる傾向となっています。
 では、子どもはどうか。「みんなが持っている権利」「人がその人らしく生きられる権利」などは大人と同じですが、「いじめ」や「差別」と書く子どもたちが少なからずいるのが大きな特徴です。
 
 次に、今まで受けてきた人権教育、人権啓発の内容について質問します。
 被差別部落、在日コリアン、アイヌ民族、障害者、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント、ジェンダー、人種差別など、その特徴は個別の差別問題があげられることです。
 これを受けて、①権利について書いた答えが、抽象的、具体的どちらだったか、②同じく、自分の生活に身近なものと感じるか、そうではないか、③受けてきた人権教育・人権啓発に「働く権利」と書いた人はいるか、とさらに質問を繰り返していきます。
 権利に対して抱いているイメージが抽象的か具体的かについては、そのおよそ7割が抽象的だったと答えてくれます。身近かどうかについても、6~7割程度が「身近ではない」に手を挙げます。
 受けてきた人権教育・人権啓発を数多く書いてくれる人も中にはいるのですが、「働く権利」と書く人はほとんどいません。子どもでは皆無です。
 この質問を考えたときに想像していた通りの結果にはなっているのですが、これが現状です。日本社会で権利がどのように受けとめられているかがよく分かりますし、状況はかなり深刻ではないかと感じています。
 人権のイメージが抽象的で自分に身近なものとは感じていないのですから、これではなかなか自分が人権をもっていると実感することはできません。まさに人権は、特別な場で特別な時間に学ぶものになってしまっています。
 最後に、「人権は誰のものですか?」と聞くと、多くの人は「全ての人のもの」と答えます。なのに、人権について繰り返し聞いたこれらの質問を考えるとき、自分に関わる質問だと感じながら考える人は多くないようです。「みんなのもの」なのに、そこに自分はいないのでしょうか。
 なぜこのような現状になっているのか。その問題を考えるとき、従来おこなわれてきた人権教育や啓発の問題を考えざるを得ません。
 質問に対する答えにも書いたように、人権教育や啓発でおこなわれている大半は、個別の差別問題に対する学習になっています。リバティに来館する団体が学芸員の解説で希望するテーマも、やはり多くは部落問題や在日コリアン、障害者の問題などになっています。
 もちろんこれらの問題も、被差別者の立場以外の人にこそ、自分自身が問われている問題だと考えて欲しいと思っています。しかし、リバティに来る子どもたちを見ていると、人権学習は固くて、重くて、面白くない、自分とは関係ないものだと感じていることがよく分かります。
 人権のイメージを聞かれて、「差別」と書くのも、人権学習は差別を受けて困っている人の話だと思っていることが影響しているのかもしれません。
 このような意識を変えていくためにこそ、労働に関する問題と働く権利の話を伝えていくことが必要だと思っています。
 若者が使い捨てにされるような労働環境が広がっており、非正規雇用の増加や正社員との収入格差、残業代の未払いや長時間労働の強制、違法な解雇の横行など、問題は深刻化する一方です。
 これらの問題が若者に広がっているのですから、高校生や中学生にとっても他人事ではありません。何人かの生徒は顔を上げて、話を聞いてくれるようになります。
 労働に関する厳しい状況を伝えていきますが、大事なのは、それが権利の侵害であると気づくこと、その前提として、働く権利の内容を知っておくことが必要です。そうでなければ、権利の侵害であると気づくことすらできなくなってしまいます。
 残業や深夜労働の割増賃金のことや有給休暇、解雇予告手当など、生徒たちには初耳の情報ですが、中には熱心にメモを取りながら聞いてくれる人もいます。「僕らはそういう権利を持っている!!」と力強く書いてくれた生徒もいました。
 これらの労働条件に関する基準は労働基準法に書かれていることも、合わせて解説しています。抽象的にイメージされがちな人権ですが、賃金など生活していくためにとても大切な基準が法律に書かれており、労働者が具体的に権利をもっていることを意識してほしいからです。
 厳しい労働環境、労働者がもっている権利とともに、もう一つ伝えているのが権利を守るために活動している人の実例です。
 紹介しているのは、メイド喫茶でアルバイトとして働いていた女性が、メールひとつで「今月いっぱいの契約とする」と解雇されたことに対し、裁判を起こして、解雇予告手当に相当する額を支払うという条件で和解したことを伝える新聞記事です。
 提訴した女性は、インターネットをもとに訴状を一人で書き上げたそうです。大人向けの研修でこの記事を紹介したとき、ある参加者が「すげぇ」という感想を思わずもらしていました。
 人権侵害に声をあげても、確かに放置されるままになってしまうことも少なくありません。また、一人ひとりが社会に関わり、社会を変えていく当事者であるという実感が弱いとき、このような状況はますます悪化していきそうです。声をあげていくのは、確かに難しいです。
 であるからこそ、権利侵害に異議を唱え、自分がもつ権利の一つをしっかりと守る
ことができた実際の取り組みを伝えたいんです。権利が自分を守り、社会を変えていくための武器となっていることを実感してもらいたいという思いで話をしています。
「子どもに夢や希望を与える展示になっていない」と大阪市長から言われたリバティの展示ですが、学芸員である私たちなりに希望を伝えているつもりです。それは、組合を立ち上げた私たちだからこそ、何よりも大事にしたいと思っている「希望」です。

次回手芸学習会のお知らせ

次回手芸学習会のお知らせです。
9月20日(木)15時~18時まで。ぼちぼち京都事務所にて行います。
※いつもより1時間遅めの開始となっています。ご注意ください。
手芸学習会はゆるゆるとした集まりですので、どなたでもお気軽にご参加ください。
なお、ぼちぼち組合員には交通費が支給されます。

リバティおおさか「働く権利」のコーナーについて

こんにちは
リバティおおさかの「働く権利」のコーナーについて、職員の方の思いです。

2005年から2010年にかけて、大阪人権博物館(リバティおおさか)の総合展示(常設展示)には「働く権利」を取り上げたコーナーがありました。
これは「人権の現在」というタイトルで常設展示室の一番最初にきていたコーナーのなかにありました。1995年から10年続いた常設展示を新しくしよう、という計画が持ち上がり、その計画を立てていくなかで、私たちは「人権」を正面から取り上げたコーナーが必要だと考えました。「人権」というと言葉では「すべての人が生まれながらに持っている大切な権利」というように言われますが、実際には「人権」は差別されている少数の人だけの問題で、「自分とは関係ない」そんな風に受け取られがちです。だからこそ、「人権」が自分自身を含めたすべての人の問題だと気づいてもらうために、「人権」「権利」を軸にしたコーナーを一番最初につくろうと考えたのです。
「人権」「権利」をすべての人に関わる問題だと気づいてもらうには、すべての人に身近なことを入り口にしないといけません。そこで、色々と考えて行き着いたのが、「働くこと」と「学ぶこと」。「働く」「学ぶ」ということは、すべての人に関わることです。働く権利・学ぶ権利は日本国憲法26条・27条にはっきりと「権利」として書かれています。
しかし、私たちの社会には学ぶこと・働くこと、この基本的な権利が守られていない場面がいくつもあります。そこで、この2つのテーマから人権について考えるコーナーをつくりました。
私たちの権利は法に明記されることで具体化します。私自身もそうですが、実際に働いている人でも、「労働基準法」などの法律を読んだことのある人はあまり多くないと思います。そこで、展示ケースの最上段には、労働に関する法律から、いくつかをピックアップしてデザインしました。
そして、雇用や労働環境、過労死や外国籍の労働者、パート・アルバイトなど非正規雇用の問題などいくつかの問題を取り上げ、現状を表すグラフと、それに対して声を上げ「権利」回復のためにたたかっている人の資料を展示しました。
取材のなかでは、命を落とすまで働かされる労働の現状や、都合よく安価で働かされて切りすてられる外国籍の労働者のことなど、耳を疑うような話をいくつも聞きました。こうした現状を知ってもらい、これが当たり前なのではなく「権利」の侵害だということに気づいてもらいたいと思って展示をつくっていきました。
実は、この展示にはやり残したことがありました。2005年からのリニューアルに向けて、展示の準備や取材、調査をしていたのは2004年から5年にかけてのことでした。
その間、労働者派遣法が「改正」され、派遣期間制限が「緩和」されたり、製造業務への派遣が認められたのです。しかし、恥ずかしながら展示準備をしていた時には、この問題の大きさに気付くことができませんでした。その後、浮上した労働をめぐる問題の数々は周知の通りです。
当時、常設展示は5年ごとにリニューアルすることになっていました。そこで、次のリニューアルの機会がきたら、労働者派遣法の問題やワーキングプアの問題など、もっと先鋭化した労働をめぐる問題をきちんと取り上げた展示にしようと話し合っていたところでした。
また、「権利」という意味では、もっと根本的な「生存権」が脅かされつつある現在、「生きる権利」もとりあげなければ、という話も担当者どうしでしていたのでした。
ところが、2010年度に新しくなった常設展示は当初私たちが計画していたものとは異なったものになってしまいました。これまでの展示が「難しい」から、「子どもむけ」にしてほしいという大阪府からの強い要望もあり、議論を重ねるなかで「人権」を取り上げたコーナーはなくさざるをえなくなりました。
今の社会はどうしたわけか「権利」を主張することが悪いことのようにいわれてしまったりします。「人権」を侵害されていることが、「自己責任」のようにいわれることもあります。本当に助けを求めている人が、助けを求めたり、そうした社会や政治に異議を申し立てることがいけないことのような風潮になってきているように感じます。
そうじゃない、「人権侵害」はあきらめるほかないことではなく、「権利」を主張することは当たり前のことなんだということを多くの人が知る場所。大阪人権博物館はそういう施設だと考えています。だから、こんな時代だからこそ、大阪人権博物館は必要なんだと思います。
大阪人権博物館の展示が「差別や人権に特化されていて、子どもが夢や希望を抱ける展示になっていない。僕の考えに合わない」といって、大阪府・大阪市は補助金の廃止の方針を一方的にうちだしてきました。このままでは、大阪人権博物館の存続が難しくなってしまいます。
しかし、「人権」「権利」を主張することが煙たがられ、抹殺されようとしている時代は、権力によって「人権」「権利」が大きく侵害されようとしている時代と言えると思います。
大阪人権博物館に「働く権利」のコーナーはなくなりました。そして今、自分たちは多くの来館者に発信してきたように、私たち自身の「働く」という「権利」を守るために声をあげることにしました。
私たちは自分たちの権利を守るとともに、こうした「人権」を軽視する時代にNoと言っていきたいと思います。

■ユニオンぼちぼち リバティ分会 https://twitter.com/union_liberty
■リバティおおさかを応援する!「リバティおおさかの誤解にお答え!」
 http://blog.zaq.ne.jp/20120529r/article/34/
■リバティおおさか全国ネット「リバティおおさか存続のための署名活動」
 http://ameblo.jp/libertyouen/entry-11347613398.html

ビショップ社の記事まとめ

ビショップ社からのブログ削除要請について(1)
ビショップ社からのブログ削除要請について(2)
ビショップ社の解雇問題について(続報)(その1)
ビショップ社の解雇問題について(続報)(その2)
ビショップ社の解雇問題について(続報)(その3)

リバティ分会にご注目とご支援を!

私たちはリバティおおさかの存続と私たちの雇用・労働条件を守るために、誰でも一人でも入れる組合・ユニオンぼちぼちに加入し、分会を立ち上げました。
 リバティおおさかは、被差別部落に関する差別問題の解決と啓発に寄与することを目的に、1985年に開館した博物館です。
 現在は被差別部落のみならず、さまざまな差別・人権課題を対象とする「人権に関する総合博物館」として運営されています。
 私たち学芸員も、それぞれ被差別部落、在日コリアン、アイヌ民族、沖縄、障害者、女性、HIV/AIDS、性的少数者、ハンセン病回復者、ホームレス、労働権・教育権などの専門分野をもちつつ働いています。
 私たちは、大阪のみならず日本各地の差別・人権問題についての資料を収集、保存、そして展示公開することが人権啓発と人権教育に貢献し、社会全体の利益になると思い働いてきました。その公的な意義が増すことはあっても、なくなることはないと考えています。
 リバティおおさかを運営するための経費は、毎年大阪府・市からの補助金が大きな割合を占めてきました。しかしながら、大阪府・市が、財団に対する2013年度以降の補助金廃止の意向を示したことで、状況は大きく変わりました。次年度以降の事業継続には多くの困難が予想されています。
 こうした現状をうけて、多くの皆さんが、リバティの存続を求めて応援してくださり、声をあげていただいています。
 この場を借りまして、皆さんに深い感謝の意を表明いたします。本当にありがとうございます。
 今後、このページを中心に、リバティおおさかの今後を憂う皆さんに対して、私たちの思い、訴えを伝えていきたいと思いますので、ご注目下さい。
twitterのアドレスは https://twitter.com/union_liberty
facebookページのアドレスは http://www.facebook.com/unionliberty2012

反貧困京都集会2012 & キャラバンin京都 「人間らしい生活と労働の保障を求めて、つながろう。」

今月末、反貧困ネットワークが下記の企画を行ないますので、紹介します。
(以下、転送転載歓迎)
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反貧困京都集会2012 & キャラバンin京都
「人間らしい生活と労働の保障を求めて、つながろう。」

誰とも〈つながり〉たくなんてない?〈つながり〉
を失った人、〈つながり〉に傷ついた人、〈つながり〉
に裏切られた人、〈つながり〉を恐れている人。多様な
〈つながり〉のあり方を求めて、私たちは集会を企画し
ます。ホームレスの人たちが路上で売る冊子『ビッグイ
シュー』が生んだ〈つながり〉。365日24時間の電話相
談「よりそいホットライン」が生んだ〈つながり〉。
二つのこころみから、この社会の基盤にあるべき〈つな
がり〉を考えたいと思います。

■日時: 2012年 9月29日(13:00開場)?
■会場: アバンティ響都ホール(定員362名)
   京都府京都市南区東九条西山王町31アバンティ9階
■参加: 事前申し込み不要。参加費無料。
*要約筆記が必要な方は9月20日(木)までにお申し
出ください。
■内容:
●オープニング: 反貧困全国キャラバン2012テーマ
ソング Asianまんはったん
●記念講演1 ?当事者が解決の担い手となる
     ―ホームレス支援・ビッグイシューの試みから
 佐野章二さん(BIG ISSUE JAPAN代表)
●記念講演2 「よりそいホットライン」が教えたもの
          ―日本社会が壊れかけている!
 熊坂義裕さん(社会的包摂サポートセンター代表理事)
*キャラバン予定は、
10月1日(月)府北部方面、
10月2日(火)府南部方面、です。

■反貧困ネット京都blog:http://hanhinkonkyoto.blog104.fc2.com/
■共催:反貧困ネットワーク京都
    反貧困全国キャラバン2012京都実行委員会
■お問い合わせ:Tel:075-241-2244/ Fax:075-241-1661
(担当舟木)

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(以上)

ビショップ社の解雇問題について(続報)(その3)

具体的解雇理由を書面で示す問題について
 当労組は、6月12日付「回答書」で、解雇理由として貴社が示した3点は全く曖昧で不十分なものなので、具体的な解雇理由を示すよう求めました。それに対してビショップ社は、既に解雇理由を示しているといった無理な反論を繰り返したあげく、7月13日にようやく具体的な解雇理由を提示されました。
ところが、ビショップ社は7月27日通知書で「A氏が当社に対し、労基法第22条に基づく解雇理由証明書の発行を希望されているのであれば、A氏本人より、当社に対して直接請求されるか、ご本人より貴組合に対する証明書代理受領についての委任状を当社に送付下さい」などと書いてきました。
この態度はいったいなんなのでしょうか。A氏が組合加入され、それを受けてA氏と組合は一体となって、文書をビショップ社に送り、解雇理由を示せといってきたのです。それを全く無視して、7月27日の段階で「労基法第22条に基づく解雇理由証明書の発行を希望されているのであれば」などと、まるでこれまで解雇理由の書面を求めてこなかったかのように言うのは、不誠実にも程がある不真面目な態度です。
労基法22条は、A氏個人が文書で請求しないといけないというような手続きを定めているのではありません。その法的精神は、解雇される労働者が解雇理由を書面で欲しいと申し出ることができ、その場合会社は速やかに応じなくてはならないと規定しているのです。ビショップ社はこれに違反しているにもかかわらず、「これまでは正式な請求はなかった」というような詭弁を弄しています。委任状を出せなどとまだ言うのでしょうか。
組合側が6月12日に文書で具体的解雇理由を求めているのは明白です。また会社に団交申し入れに行った6月29日にも、「ビショップ社はA氏に明確かつ具体的な解雇理由を言っていないし、文書も渡しておらず、ユニオンにも正式に解雇理由を示さず、文書を求めても出さない。そうした態度自体がおかしい。その解雇理由はまず会社側が文書で示せ」と申し入れています。それに対して、ビショップ社の社労士とB部長は馬鹿にしたように笑って、どうして先に会社側が文書を出さないといけないのかと居直りました。そして今回、今まで組合側が文書で解雇理由を具体的に示せといったことがないかのようなことを書いてきたのです。
このようなふざけた態度を取り続けるビショップ社に対して、私たちはこの点での謝罪も求めます。
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解雇およびパワハラについて
 A組合員にビショップ社からの解雇理由に関連して事実はどうであったのかの調査をいたしました。ビショップ社の主張と大きな食い違いがみられます。従いまして、組合としましては団交の場で、全面的に反論していきたいとおもっています。
パワハラにつきましても、ビショップ社は、会社側からの文書やブログ記事削除理由の文章で「パワハラはない」と述べておられますが、組合側と見解に相違があります。この点につきましても、団交の場で、組合側がどういう意味でパワハラと述べているのか説明させていただきます。
したがいまして、この点も団交課題(義務的交渉事項)となります。この点につきましてもビショップ社は「パワハラがあるというなら先に組合側が詳細に文書でどんなパワハラがあったのか証明すべき」といったスタンスをとっています。
 一般的にいいますと、団体交渉でいかなる事項を取り上げるかは交渉当事者が自由に決める事がらであり、無制限です。しかし、使用者が団体交渉を行うことが義務づけられる事項(義務的交渉事項)について使用者が交渉に応じなければ団交拒否の不当労働行為が成立します。
パワハラは労働者の人権に直接かかわる事項であり、パワハラがあると組合側がいい、それに関連して解雇の正当性も議論するといっているのですから、パワハラに関する話し合いも当然義務的交渉事項です。ビショップ社が「当社は、貴組合による、当社に対する団体交渉申し入れ事項の範囲は、貴組合員と主張されるA氏個人の労働条件(この度は解雇処分)に限るものと解釈している」(7月27日文書)と述べて、パワハラ問題を団交議題としないかように言っておられました。それに対し私たちが抗議したあとは、ビショップ社は、パワハラは団交議題と認識を改めたようです。しかし依然として組合側が詳細に文書でどんなパワハラがあったのか証明すべきといっています。そうしないと団交の場で回答できず、それは誠実交渉義務違反になってしまうと言っています(8月10日文書)。
これは団交の現実を全く知らない暴論です。団交の場ですぐに答えられないから誠実交渉義務違反になるなどということはまったくありません。それは団交で話し合える範囲で話し合い、次回までにまた調査すると言って終わればいいだけのことです。したがって団交前に文書によるパワハラ存在の具体的証明が必要というのは誤った主張です。
 また、「労働組合そのものに関係のある事項」には、ユニオンショップ制、組合事務所・掲示板などの便宜供与や就業時間中の組合活動の範囲など組合活動のルールや団交ルールが含まれます。今回、ビショップ社は文書で情報を出せといった理由をもって団交を拒否しながら、その渦中に一方的解雇をされましたので、そうした対応につきましても、解雇問題やパワハラ問題と絡めて議論していきたいと思っています。つまりこれまで団交に応じずに文書をだせと言い続けてきたことも団交議題としてあげたいと思います。
 
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以上より、私たちは団交で以下の点について話し合いたいと思っています。
団交の交渉事項
1 解雇について
2 パワハラについて
3 団交を拒否し続けたことについて
4 解雇理由を書面でだす問題について
5 ブログ記事削除問題について
6 その他
ビショップ社には、解雇された上に、本人の責任にされたAさんの気持ちを考えて欲しいと思います。団交の場で、Aさんの言い分を聞き、話し合うのが、会社の責任であり、法的義務です。解雇を正当と思い、パワハラがないと思うなら逃げずに団交の場に出てきてください。
ビショップ社は社会的に責任ある企業として、早急に団交に応じてください!
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またビショップ社で働いている皆さんには、Aさんに対する会社の対応の事実を知っていただきたいとおもっています。ビショップ社の諸問題について、勇気をもって声を上げてください。労働者の尊厳が守られる職場にしていきましょう。
ビショップ社を退職された方も、ぜひ「ユニオンぼちぼち」にご連絡ください。

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ビショップ社の解雇問題について(続報)(その2)

団体交渉とは、直接対面して交渉することですので、ビショップ社が書面の交換による交渉に固執し直接交渉に応じないことは不当労働行為です(普連土学園事件・中労委命令昭60.5,8労経速1227号、奈良学園事件奈良地裁判決平2.4.25労判567号、清和電器事件・最高裁判決平5.4.6労判632号)。ビショップ社が団交要求についての文書説明を要求しその文書が出ていないことを理由に団交拒否しているのも不当労働行為です。交渉日程を3ヶ月以上具体的に決めないのも誠実交渉義務違反です。
博多南郵便局事件判決では、「団交開催に必要な予備折衝の開催は適法」とされていますが、ビショップ社がこだわっている点は、「団交開催に必要な予備折衝」というものではありません。予備折衝さえしようとしていないのですから、博多南郵便局事件判決を持ってくるのはお門違いです。ビショップ社が行っているのは、同判決の名を借りた団交拒否に過ぎません。実際、会社に行った時も、予備折衝をしようという姿勢ではなく、「ここでは話しあわない」と明言しました。また8月16日に、平行線状態になっているので、前向きな解決を探るために組合側の一人と会社側一人の二人で予備折衝を行いましょうと提案しても、「会わない。文書を出せ」の一点張りでした。
予備折衝とは、電話で調整したり、担当者だけで団交の前提の具体的論点の調整などをすることです。しかしビショップ社は、今までのところ、一切団交開催に向けての具体的な折衝にも応じず、ただ文書のやりとりだけをすると限定し、来社/来店するなと言い、社労士の連絡先も教えるよう要求しても応じず、会社の団交申し入れに行った時にも予備折衝することを拒否しました(注)。総合的に見て団交拒否の態度を貫いているといわざるをえません。
(注)5月29日会社回答書で「貴組合からの電話や面談の申し入れについては、当社就業時間内外、当社施設内外であると問わず、当面一切お断りいたします」とされ、また、6月8日の会社の回答書で「当社受付や当社店頭においては正確さ慎重さを期することはできない」などと述べています。
 そして団交申し入れ書を持って行った6月29日の後には、内容証明郵便で「貴組合の独自の見解を展開され、突然来社し、退去に応じない等の行為は、今後一切控えていただくよう、本書をもって厳重に講義を申し入れる。」と書いて送ってきました。さらに、私たちのブログ記事を削除するように管理会社に要求する文面では、私たちの組合に対して「嫌がらせの連続で、まっとうな人間がやる行為ではありません」とひどいことを述べています。
 こうしたビショップ社の態度は、「使用者は自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意を持って団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどして、そうした誠実な対応を通して合意達成の可能性を模索する義務がある」という労使関係の常識に反しています。
その姿勢は、当労組が運営するブログ記事削除要請の説明文書(9月○日ブログ記事参照)においてビショップ社が述べている内容にも明白です。
 そこには、私たちが粘り強く団交開催を求めていることに対して正しく理解するどころか、感情的かつ大きな不信感が見られます。ビショップ社の文面からは、本音では、まっとうな会社が組合から嫌がらせをされており、組合は他人を傷つける反社会的行為をしているところだと被害感情を持っている様子が伺えます。組合のやっている活動をまっとうな人間のすることではないとまで言っています。
これはまさに認識のゆがみであり、解雇をした(しかも組合側が不当解雇といい、パワハラもあったと主張しているような案件としての解雇)という会社の責任を顧みず、自分たちの団交拒否という態度の誤りを認めずに、あくまで被害者だと主観的に感じているという様子がうかがえます。組合嫌悪の感情を持っているように感じます。
そんな感情を持っているビショップ社だからこそ、私たちの団交要求に応じずに、なんとか団交を避けようとする気持ちを持っているのだろうということが少しわかりました。しかし、これは繰り返しますが、A組合員を一方的に解雇した会社が言うことではなく、自分たちが解雇しておきながら自分たちを被害者と思う本末転倒した認識であり、団交に応じる義務があるという法律の主旨を理解されていない誤った態度です。
ブログ記事削除願いの文章において、まるで当労組側が無理を押し通そうとしているいかがわしい組織であるかのようなことを書かれていますが、とんでもない事実誤認です。A組合員の元上司や同僚がこころを痛めているということですが、A組合員もこの間の会社の対応で大きく傷つけられています。A氏、元上司や同僚の方々のためにも、団体交渉を速やかに開催し、円満解決に向けて実質的な話し合いがなされることを望みます。そうすればこのような入口での無駄な時間の積み重ね、ブログ記事をめぐったやり取りも必要なくなります。
ビショップ社には、ぜひ、話のわかる弁護士(労働問題に詳しい方)に、この間のやり取りの全資料を見せて、当労組の主張していることがそんなにおかしなことなのか冷静に判断してくださることをお願いしたいと思います。A組合員の尊厳と人権を守るためにも、またビショップ社の名誉、利益を守るためにも、会社に不利になるような主張を繰り返すのでなく、誠実に団交に応じ、その場で解決に向けて話し合っていかれることを強く求めます。
続く

ビショップ社の解雇問題について(続報)(その1)

7月4日にこのブログで、ビショップ社との交渉状況(Aさん解雇事件の中での団交拒否の状態)をお知らせしましたが、いまだ状況は改善されていません。
その後の状況を今回お知らせしたいと思います。
前回のブログ記事 7月4日「ビショップ(BSHOP)が団交に応じません!」

ビショップ(BSHOP)が団交に応じません!


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ビショップ社は、私たち(関西非正規等労働組合、通称「ユニオンぼちぼち」)が団交を要求していることに対し、「労組法2条にあるような、貴組合がいかなる組合であるのかの情報を出さないと団交には応じない」とか「解雇理由への反論をまず文書で出せ」とか、その他の理由で、団交も事前折衝で会うことも現在まで拒否しています。
団体交渉についての規定として、憲法28条は「勤労者の団体交渉権」を定め、労組法7条2号は「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉すること」の拒否を不当労働行為と定めて禁止することによって、団体交渉について、個人交渉と異なる交渉権の保護、すなわち使用者に誠実交渉を強制しています。
そして、一般的に、団体交渉とは、直接対面して交渉することを意味するので、文書のやり取りは団体交渉ではないとされています。したがって、使用者が書面の交換による交渉に固執し直接交渉に応じないことは不当労働行為になるとされています。また団交要求についての文書説明を要求しその文書を出さないことを理由にした団交拒否も、要求の説明は団交の席上口頭ですればよいから、文書説明にこだわることは不当労働行為にあたるとしています。こうした点においてビショップ社の言い分は不当労働行為の疑いが強いといわざるを得ません。
 さらに、交渉日程についてですが、使用者は、団交申込みを受けてから一定期間内の適当な時期に交渉に応じる義務を負っています。具体的にどの程度の期間かは、ケースバイケースですが、当労組が団交を5月21日に申し入れてから約3ヶ月以上たっても日程をきめられない(団交に応じる気配をみせない)のは、異常な事態です。
しかもそのあいだにビショップ社はA組合員を解雇しました。一度も団交をしないまま、先に解雇するというのは、解雇という生活にかかわる大事な問題を誠実に話し合って同意や理解を得ていこうとする態度ではなく、組合と当該労働者の無視という不誠実な態度と言えます。さらにA氏は病気療養中でした。解雇をめぐって意見の相違があり、交渉を求めているさなかに交渉せずに解雇するという姿勢には誠実さがないのではないでしょうか。
 予備折衝(事務折衝)は、実質的な交渉に入る前の事務準備手続として行われる場合が多いものですが、法的には広い意味での団体交渉の一部にあたります。したがって、使用者が予備折衝に入ること自体を拒否している場合や、予備折衝において誠実な態度をとらない場合も不当労働行為になります。この点でもビショップ社の態度は問題です。
ただし、少数者の結成した労組からの団交要求に対して、使用者が組合の実態、当事者適格性の把握等のためにまず予備折衝を行うことを求め直ちに団交要求に応じないことは、不当労働行為にならない場合があるという判例(博多南郵便局事件・東京高判平成2.4.25)もあるので、ビショップ社はこの点を根拠にこれまで執拗に「組合の実態、当事者適格性の把握等」にこだわってきたわけです。
それに対しても私たちは、組合の実態は伝えているので当事者適格性は明らかで、しかも事前折衝にさえ応じないビショップ社の言い分には正当性がないと考えています。私たちは既に関西非正規等労働組合がちゃんと活動している組合であることを示してきました。結成年度を示し、毎年大会を開き、組合規約もあり、多くの労働相談や労働争議、団体交渉を経験してきていることを伝えました。執行委員長と担当者の名前は団交申入書に記載されています。
HPやブログ、インターネットで検索して情報を集めれば、当労組が真面目に活動している団体であることがわかるとお伝えしています。当労組は新設労働組合ではなく、所在地、組合費、活動内容等がインターネットで公開されています。これまでもビショップ社とのやり取りに際して、当労組は文書のやり取りや話し合いに冷静に応じていますので、反社会的勢力ではないことは明白です。資産などは団交するにあたって必要な情報ではありません。私たちが「労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体」(労組法2条)であるのは明らかです。
7月19日付の当組合からの文書においても、当労組から2012年6月6日付文書、6月12日付文書、7月9日付文書および6月29日の会社への申し入れ行動時の説明において、当組合は以下の諸点を説明してきたことを再度説明しています。
 すなわち、文書でないと正確ではないという貴社の主張は間違いであること、当労組には活動してきた実態があること、労働組合とは、どこかに登録しなくても活動できるものであること、私的企業と労組の労使交渉において労組法2条の組合であることを証明する必要はないこと、ビショップ社の「いかなる組合であるのかの説明がないと団交に応じない」という主張は、憲法28条の団体交渉権に反する態度であり、労組法7条2の不当労働行為であること、などを再三指摘しておきました。
私たちの主張は以下の通りです。すなわち、ビショップ社が現時点まで博多南郵便局事件・東京高判をよりどころとして、「貴組合がいかなる組合であるのか(法的根拠)を示せ、それまでは団交に応じない」と主張し続けていることは、総合的に見て、無理やり形式的な情報を出せという点に固執して、事実上、団交開催を先伸ばししている態度であると考えます。
文書による回答に固執して、面会での協議をしようとしないことは誠実交渉義務違反です。素直に見て、財産管理、どのような資産がありどのような運営をされているのか、代表の方法、総会の運営、どのような執行部及び組合員であるか等を示せというような、団交開催に向けて重要ではない情報にいつまでもこだわるのは、いやがらせ、あるいは団交拒否の口実であると多くの第3者は見るのではないでしょうか。
何度も労組法2条の情報は、団交には出す必要はないとされている(労働委員会の救済手続きを利用するときや法人格の取得には労組法2条但書が関係するが、今回のような通常の団交には不必要)とお伝えしているのに、いつまでも同じこと繰り返して団交拒否をしているのは全く解せません。
労組法の要件を満たす労組を「労組法の組合」と呼び、憲法上の保護を受けるが労組法の要件を満たさない労組を「憲法上の組合」「法外組合」と区分して呼ぶことはありますが、後者でも団交ができますし、私たち「ユニオンぼちぼち」は、労組法の要件を満たしてはいますが今回それをビショップ社に示す必要はないので、伝えていないだけです。労組法2条但書や同法5条2項の要件を欠く労働組合でも憲法上の団体交渉権は当然保障されるとされています(日本通運秋田支店事件、秋田地裁判決昭和25.9.5)。団交議題が解雇撤回である場合、被解雇者が組合員であることを示せば足り、被解雇者以外の組合員の氏名、人数を明らかにすることは不要とされています(新星タクシー事件・東京地裁判決・昭和44.2.28)。
続く