働くってなんやろか

ごんべえさん(組合員・仮名)がニュースレターに書いてくれた「働くってなんやろか」という文章です。
働くってなんやろか
                                    ごんべえ
 え~4月に大学を卒業しまして、わたしもはれて学生じゃなくなったわけです。大学4年の時は、それこそ就職活動を拒否するというただそれだけの闘いを全力で生きていましたが、いざ就職しないで4月を迎えてみると多少の不安はあるものの、なんだこんなものかという感じです。不安というのは「何してる人ですか」と聞かれた時に答えにくいという不安です。
 さて、しかしながらわが友人たちはいろいろな道をすすんでいます。生命保険会社に就職した友人からはロボットみたいな顔になった写真が送られてきました。今は営業成績を伸ばさねばならぬ時期らしく、毎週新幹線で京都まで営業に来るものだから、とうとう僕も生命保険に加入してしまいました。不払いが問題となっていた時期ですが僕が死んだら親に1000万円入るそうです。親じゃなくて友人にお金が入るようにしたいと頼みましたが、だめだと言われました。口を開けば保険の話しかしなくなった彼ですが、入社5日目に自殺者がひとり出たことについても、「さあー、いろいろ悩んでたんじゃねーの?」と、元気そうでした。
 京都で働く友人たちもいます。パン屋で働く友人は最初しんどそうでしたが、朝早くから働いて夕方は時間ができるし、お客さんをもてなすのは楽しいと語っていました。タクシー会社に就職した友人は、さいきん夜勤の担当らしく少し疲れた感じでしたが、まあなんとかなっているようです。ただシフト制で職場の人と遊びに行けないことや、休日にやることがないと不安だと言っていました。
 介護派遣事業所で働く二人の友人は、ストレスがあまりたまらなくて良いと言っていました。金持ちの片棒担ぎみたいな仕事でなければ、精神的にも楽なのかなあと思います。
 さてわたくしはと言いますと、ホームヘルパーと病院の宿直の仕事をかけもちして生活費を稼いでいます。月に10万円も稼ぎませんが、今は家賃が光熱費込みで1万円なので、貯金してます。最近やっとわかってきたことですが、わたしがあんなに必死で闘っていたのは、働くことが嫌だったんじゃなくて、生きることの目的や意味がすべて就職とその後の身分に収斂されていくような「あの」空気が心底いやだったんだということです。開き直ってしまえば逃げることは容易だったかもしれませんが、敢えてどっぷりとその空気の中に浸かりながら考えたために、胃薬を買わねばなりませんでした。
 最後にハンストカフェを手伝いながら思ったことを書きます。ハンストカフェの運営はとても楽しかったです。働くことの楽しみや輝きは、企業や大学のいう「自己実現」と、はっきり区別することはできないのかもしれない、でもあの時わたしが見た輝きは、ただただ、からだが解放されていくような心地よい風のようなものだったと今にして思います。
(2007年8月2日記)

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