大学は雇用に対してどのように向き合っているのでしょうか。大学は非正規雇用労働者とどのように向き合っていくべきなのでしょうか。花園大学との団体交渉はとても象徴的なものでした。
花園大学との団体交渉(2018年2月6日)
経緯
Aさんは、花園大学で非常勤講師として働いてきました。また、人権教育研究センターの委嘱研究員でもあります。2012年から2017年まで5回の契約更新を重ねてきました。2016年に大学は10人以上の非常勤講師がになってきた人権科目を2018年3月末で撤廃し、人権総論という前期・後期4コマの授業のみにする新カリキュラムをつくりました。Aさんは5回の契約更新を重ねているので、無期転換を希望し、雇用を維持するように要望しました。Aさん以外の非常勤講師はすべて雇い止めされ、Aさんは最後の一人になりました。
団交の記録
組合側は、Aさん、B組合員。
大学側は、和田寿人・総務部長、大原孝弘・事務局長特命課長、他職員3名。
(以下は団体交渉のダイジェストです。文字起こしではありません。)
Aさん はじめに私は人権科目を維持してくださいと要望しました。しかし、大学は難しいというので、人権教育研究センターから要望が出たら検討できますかと聞いたところ、それは助かりますと回答がありました。そこで、人権教育研究センターにも事情をお伝えし、センターも現カリキュラムへの移行には反対しておられたので、私の雇用も含む新カリキュラムを提案してくださいました。ところが、大学側からお願いしますと言われて調整したにも関わらず、大学はゼロ回答を繰り返しました。ゼロ回答ばかりを繰り返すので、組合からは、人権総論をリレー講義にして、その一部を担当する形にして雇用を維持するのはどうか、と提案しました。
前回の団体交渉では、人権教育研究センターに確認してください、と言って終わりました。その回答を聞かせてください。
和田総務部長 大学の回答は以前と同じです。センターからは人権総論のリレー講義で担当いただく件について、何ら連絡はありません。
Aさん そうではなくて、大学として確認はしていないのですか。
和田総務部長 確認と申されますが、カリキュラムの問題ですので、こちらから確認することではございません。
Aさん 前回もお互いの立場の違いが出ました。こちらは雇用問題、そちらはカリキュラムの問題と対立しましたが、カリキュラムをいじれば雇用が失われるんです。雇用の維持のために人権総論のリレー講義担当ができるように積極的に働きかけてほしいという要求に対して、カリキュラムに関わった大学改革IR推進室の吉田さんが前回の団交で「わかりました」と発言しました。
和田総務部長 吉田はそのような趣旨で言ったわけではないと記憶します。
大原特命課長 吉田からは人権教育研究センターのセンター長に確認したと聞いています。
Aさん どのような確認でどのような答えがあったのですか。
大原特命課長 確認したと聞いたまでで、どのような返事があったかは分かりません。
Aさん 今日回答するべきは、そのことのはずです。センターに確認した結果、やはり雇用維持は難しいという回答はありえると思っていましたが、まさかセンターに確認さえしていないとは思いませんでした。
大原特命課長 ですから吉田から確認はしております。
Aさん では、吉田さんにいま電話して聞いてください。いますぐです。どこで、誰が、誰に、どのような確認をして、どのような回答があったか、きちんと聞いてきてください。その回答がないと始まらないでしょう。
大原特命課長 電話ですか、、、吉田は学内にいて、いま別の業務をしておりますので、聞いてきます。(退席)
Aさん 事前にメールでも今日の回答については示唆したはずですが、なぜ確認さえしなかったのですか。
和田総務部長 センターに確認する義務はありません。むしろAさんがセンターになぜ確認をされなかったのですか。確認するべきでしょう。
組合員B 大学に確認する義務はありますよ。団体交渉の席で、労働者が雇用に関する要望をしたわけですから、それを検討する義務はあるでしょう。配置転換を団体交渉で要求した労働者に対して、「配置転換はあなたが自分で調整するべきでしょう」と言えますか。
Aさん これは不誠実団交です。そもそも花園大学ではどのようにして有期雇用労働者を増やしてきたのですか。たとえば、私たちが知っているケースでは、立命館大学はある時期、ある日からそれまで任期なしで働いてきた人たちが同じ仕事をしているのに、任期をつけられて雇い止めになる、ということがありました。
職員A どの段階からというのはいま分からないですが、正社員、アルバイト、パートとそれ以前から多様な雇用形態があり、任期付きも加わったということかと。
Aさん あなたは有期雇用はなぜあるのだと思いますか。その意味は何だと思いますか。
職員A それは、いまは有期雇用でもがんばったら正社員ぞとお尻を叩くといいますか、それでがんばる人には正社員への道も開いておりますし。やはり、業務縮小の時などに、企業側が切りやすいということだと思います。
Aさん・組合員B そうなんです。クビを切りやすくするためなんです。
(大原部長帰ってくる)
大原特命課長 いま聞いたところ、吉田から松田に引き継ぎ、松田からセンター長に確認をしたということです。
Aさん それで回答は?
大原特命課長 センターからはとくにないということです。
Aさん 大学からセンターに回答をいつまでにしてくださいと働きかけはしていないのですか。
大原特命課長 そこまでしたかは分かりません。
組合員B 話にならないでしょう。何も案を準備してこないで。今日は何をしに来たんですか。
和田総務部長 ですから、こうして話し合いの場を誠実につくっているでしょう。カリキュラムのことはセンターの管轄ですので、私たちが確認する義務はありません。
組合員B 和田さんは回答の義務はないと言い、大原さんは確認していると言い、大学側もまったくばらばらじゃないですか。回答の義務があると吉田さんが考えたから、吉田さんは現にセンターに確認したわけです。その回答を準備してくるべきでしょう。
Aさん このゼロ回答は不誠実ですよ。不誠実団交です。
和田総務部長 ゼロ回答だと不誠実になるのですか(笑)。
組合員B ゼロ回答の内容によります。大学が雇用維持について何の前向きな提案もしないので、そちらからお願いしたセンターからの要望もはねのけて、リレー講義の話もこちらから提案してわかりましたと言っておきながら、確認さえしてこない。ゼロ回答ではなく、マイナス回答ですよ。あなたの回答には人間味がなさすぎる。大学に限らず若者の非正規の問題は深刻ですが、もしあなたのお子さんが雇い止めになったとしていまのような対応を受けたらあなたはどう思いますか、と先ほど聞いたときに何も答えてくれませんでしたよね。本当に想像してほしいんです。この時期にまだ雇用が決まらないで宙ぶらりんで待たされて、思わせぶりなことを言しながら、期待をもたせて先延ばしにして。生活のことだってあるわけですよ。
和田総務部長 ・・・回答はひかえさせていただきます。
組合員B じゃあ義務がないのになぜあなたはここにいるんですか。
和田総務部長 使用者だからです。
Aさん そうですよ。使用者で団体交渉応諾義務があって、ここはいま雇用問題を話す場なんですよ。それをカリキュラムの問題と整理して義務はないと言っても、カリキュラムをいじると雇用に関わるわけですから、確認さえ怠るのは不自然すぎるでしょう。
有期雇用は、先ほど職員Aさんも言われたとおり、使用者がくびきりしやすくするためのものです。しかも、相手の顔を見ないで切れるものです。花園大学は入学者数が減って、業務縮小の流れにあり、その中で今回の人権科目の削減もあったはずです。私としては無期転換も希望し、これは実質上の整理解雇なので、整理解雇の要件を満たしてほしいとお願いしました。非正規のくびを切って調整して終わりではなくて、痛みを分かち合う姿勢が見たかったのです。しかし、大学は整理解雇ではない、カリキュラムの問題だと繰り返すばかりでした。学長にセンター会議でこの話をした際には、学長も業務縮小だから止むをえないと語っていました。業務縮小なんですよ。
今日の回答は雇い止めということですね。
和田総務部長 いや。雇い止めではないですよね。ですよね。
大原特命課長 雇い止めではなく、契約満了ですね。
組合員B 有期雇用労働者を契約満了で契約更新しないことを「雇い止め」というのです。
Aさん いまの言い直しが、本当に象徴的と思います。雇い止めですし、私の考えでは解雇です。有期雇用は顔を見ないで切れる仕組みです。切るなら顔を見て切ってください。花園大学もこれから業務縮小に入り、雇い止めになる人たちがさらに増えると思います。きちんと顔を見て切ってください。
和田総務部長・大原特命課長 (下を見る。)
Aさん 確認さえしないでゼロ回答であったこと、抗議します。
(組合側、退席)