「脱成長」について

最近、一部で「脱成長」が注目されています。成長のどん詰まり感があることに加え、セルジュ・ラトゥーシュ『経済成長なき社会発展は可能か?』(作品社)が出版されたことがその一因です。
それに対して私の見解を書きました。
伊田広行「脱成長と労働時間の短縮」(『人民新聞』 2011年 1月5日号第1400号)
そこでは、これが学者の研究材料になるだけに終わらないように、根底から今のシステムに従属する生き方を問い直すものにしていく必要を提起しました。以下はその一部。
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今のシステムは強力で、それに取り込まれないのは難しい。日々、不断の実践として振りほどいていくゲリラ的な営みが希望と思う。目の前の現実の人の痛みや傷つきに敏感に反応し、どういう立場をとっていくかの問題だ。
という文脈で、各個人が、自分の生きる時間配分において、「今の社会での“勤勉”的なもの、つまり組織・企業に従属して縛られる的な時間」「テレビを見たり、商品を買ったり消費したりする時間」をどれだけ減らすかが鍵だといいたい。具体的に、週30時間以内ぐらいで、なんとか生きちゃうということ。
 個々人が自発的に質素な生活を心がけるというだけでの主張は、システムの対案を提起しないからダメだという意見もあるが、多くの人の意識と生活を変えていくことには大きな意味があり、また個々人の生き方のスタイルの変更と、社会全体の改革は両立させればいい。
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『人民新聞』2011年 1月5日号は、私の論考以外も載った「脱成長」特集ですので、ぜひご覧ください。
これに近い議論として、幸福度、新しい公共などの話もあります。口先だけで終わりそうです。環境問題と絡めて、大きな話だけで終わると、所詮「話題」だけになります。
私たちは、もっと地に足のついたものとして、自らがお金をあまり使わずに、スローかつ創造的に生きるという実践をしていくことだと思います。それをしないものの議論は、ベーシック・インカムもそうですが、いんちきだと思います。
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以下関連情報。
○『朝日新聞』2011年1月15日「『成長』を相対化する」記事
ティム・ジャクソン「消費頼みモデルを変えよ」など
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○ 「脱成長」のディスカッションクラス
世界の収奪システムを解体せよ ─ キーワードは脱成長! 
 「経済成長なき社会発展」をマジメに考える
 1月15日(土)11:00am-1:00pm 担当講師:Kimberly Hughes
  
日本社会の諸問題を解決し、閉塞感を打破するのは「経済発展、そしてそれによって生み出される(ハズの)雇用」しかないのだと大手のメディアも大合唱──本当にそうか?? 
近年注目を浴びている「経済成長なき社会発展」を提唱するフランスの経済学者、セルジュ・ラトゥーシュの書いた短いエッセイを読んで、経済成長しない社会を考えましょう。書かれた時期は2003年とちょっと古いけど、内容は全然古くありません。まさに2011年の私たちが直面している現実への提言。
私たちにできる大きな一歩は、自己中心で、仕事第一で、競争心理をかかえる
アタマを切り替えること! 
Would the West actually be happier with less? The world downscaled
 実は西側はもっと持たないことでもっと幸せでは? 縮小された世界。
http://www.hartford-hwp.com/archives/27/081.html
時 間 午前11時~午後1時(月1~2回 全て土曜日)
場 所 国立かけこみ亭(南武線谷保駅から徒歩2分)
環境とフェミニズムの英会話寺子屋
石原みき子
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○幸福度に関する研究会
http://www5.cao.go.jp/keizai2/koufukudo/koufukudo.html
「幸せ」尺度、開発本格化=研究会が提言へ-政府
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201012/2010122300208
@ 時事ドットコム(2010/12/23-14:21)
 国民の「幸福度」を測ろうとする政府の取り組みが本格化している。豊かさの代表的指標である国内総生産(GDP)で中国に追い越されようとしている中、多様な統計を駆使して満足度を捉え、政策立案に生かす試み。専門の研究会が来年6月までに具体的な測定方法の案を示す予定だが、人の幸せには「いろいろな側面がある」(内閣府の和田隆志政務官)だけに、議論は多岐にわたりそうだ。
 内閣府によると、経済指標を超えた尺度を求める動きは世界的に広がり始めている。ノーベル経済学賞受賞者らを集めてサルコジ仏大統領が設置した委員会は昨年、社会的発展を測る指標として幸福度の重要性を提言した。中国とインドに挟まれたブータンは既に「国民総幸福量」を指標として政策に活用。英国も幸福度の計測を検討中だ。
 国内で幸福度への注目が高まったのは、昨年9月の政権交代後だ。鳩山由紀夫前首相が、官民一体で公共サービスを担い、幸せを享受できる社会の実現を目指す「新しい公共」を提唱。菅直人首相は「最小不幸社会」を理念に掲げる。
 政府は今年6月、幸福度に関する統計の整備方針を「新成長戦略」に盛り込み、2020年までに「幸福感を引き上げる」との目標を掲げた。これを受けて内閣府は、経済学や社会学などの有識者らで構成する研究会(座長・山内直人阪大大学院教授)を設置し、22日に初会合を開いた。今後の議論では、諸外国や国際機関での取り組みを調べながら、日本特有の家族観なども考慮し、測定方法を開発する。

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