湯浅誠さんが毎日新聞で、若者の生き延び方について語っています。基本的にバランスの取れたことを言っていると思いますが、以下の見出しは、「資格で自己防衛を」となっていて、バイアスがかかりすぎたものになっています。
これでは自己責任論を言っているかのように思われます。間違った見出しといえます。
湯浅さんは、「その1割でいいので、うまくいかなかった場合にどうやって生活すればよいか学ぶ時間をとってもらいたい。」「就職に直結はしませんが、もっと基本的な労働者の権利や、仕事をやめなければならなくなった時に生活するための知恵も必要です」といっています。
なお、そのために具体的な一冊として、、「ユニオンぼちぼち」のメンバーで作った『<働く>ときの完全装備──15歳から学ぶ労働者の権利』をあげてくれています。
これは知り合いだからではなく、本当に内容がまともと思ったからそういっているのだと思います。
ユニオンのリアル、があるのは少ないし、上司や労働基準監督署にどのように言えば一番有効かが具体的に書いてあるものなど他にはないと思います。
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【毎日新聞】ライフスタイル – 2011.01.25
学力のすすめ:「資格で自己防衛を」 年越し派遣村元村長の湯浅誠さんhttp://mainichi.jp/life/today/news/20110125mog00m100039000c.html
若者が社会に出るまでに身につけるべき「学力」とは何か。7回目は「年越し派遣村」村長を務めるなど、非正規雇用労働者の支援に取り組む湯浅誠さんに聞いた。
--湯浅さんにとって「学力」とは。
狭く言えば点数ですけど、広く言えば「考える力」ではないですか。「考える力」というのは、いろいろな情報からものごとを組み立てていく力だと思います。振り返ってみると、私自身は、そういう意味で「学力」が身についたのは大学院生の時でした。学部生の時はついていなかった。今、本を読む時間がほとんどないのに、本が書けちゃうのは、大学院で訓練したからだと思います。
--どのような訓練ですか。
私が東大の大学院に入ったころは、「徒弟制度」のように徹底して学生を育てました。教授から「もう社会人と一緒なんだから、社会人と同じように1日8時間研究しなさい」と言われて、鍛えられた力が相当あります。少人数で議論のための議論をして、最終的には論文を書く。大学院は純粋な議論の場で、いかに相手との違いを見つけるかが重要でしたが、そのノリで(ホームレス支援などの)活動をして失敗しましたね。実社会では、相手と同じところをいかに見つけるかが重要だったんです。
今は早い時期から、自活能力を求めすぎるので、子供は疲れちゃうんじゃないですか。これまで日本の社会では、学校で点数をとる勉強をしていれば、卒業式が終わると自動的に企業が引き継いでくれて、社会人として一から育ててもらえた。「パイプライン」がつながっていたんですが、そこに「穴」があいてしまった。
--「穴」から落ちてしまう子がでてきたんですね。
落ちないためにどうすればいいか、具体的な知恵が必要なのに、学校も企業も「コミュニケーション能力」とか「生きる力」など、抽象的なことしか言えない。子供たちにしてみたら、どうやって身につけていいかわかりませんよ。非常につらいと思いますね。もっと具体的に、高校、大学で、このスキルを身につければ通用すると、明確に示せる社会にしなければなりません。
しかし、実際には社会がすぐに変わるわけではないので、子供にとって一番わかりやすい方法は資格をとることです。自己防衛としてはやむを得ないでしょう。もう一つ、就職に直結はしませんが、もっと基本的な労働者の権利や、仕事をやめなければならなくなった時に生活するための知恵も必要です。
--いつ、学ぶべきですか。
中学校の終わりか、高校の早い時期に一度触れて、もう少し詳しいことを高校の終わりか大学で教えると理想的です。大学3、4年生になると、就職セミナーに大きなエネルギーを割きますね。その1割でいいので、うまくいかなかった場合にどうやって生活すればよいか学ぶ時間をとってもらいたい。アルバイトでも雇用契約書や給与明細書をもらわないとおかしいということも知らずに社会に出て行く子がいるんですから。救急車が走っているのを見ても、119番を知らなければ救急車を呼ぶことはできないですよ。
--若者自身ができることはありませんか。
それは難しいな。できるとすれば(非正規雇用労働者になるとか、失業して生活に困るような話に)リアリティーが感じられる場に行ってみることでしょうね。低所得世帯の学習支援をするボランティアも増えていますし、生活相談やホームレスへの夜回りといった取り組みも広がっています。実感のレベルで分からないと、単に調べるだけでは忘れてしまうでしょう。
--自力で情報にアクセスする力を身につけることは。
できると思いますが、何か疑問に思った時に、いろいろな方法で調べて、その情報にたどりつく力は、今の日本の教育では大学に行かないと身につかないでしょう。その手前では難しいと思います。
多くの人は、友だちや家族に聞くのが精いっぱいではないですか。
レストランを探すのなら、検索すれば地図つきのサイトがすぐに見つかりますが、労働者の権利や生活保障についてそんなに便利なサイトはありません。
--若者にお薦めの本を紹介してください。
本当は先生向けですが、「<働く>ときの完全装備 15歳から学ぶ労働者の権利」(橋口昌治、肥下彰男、伊田広行共著 解放出版社)がいいかな。ワークショップ形式で基本的な知識が身につく本です。先生が授業をする時に、子供たちが楽しんで学べるように工夫されているので、子供自身が読んでも学ぶことがあると思います。【聞き手・岡礼子】
湯浅誠さんが若者の生き延び方について語る
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