明日6月23日(土)は印刷作業とカフェです


明日6月23日(土)は第四土曜日ですので、17時ころから定例のカフェがあります。前回の様子は5月の定例カフェをご覧ください。
また、13時ころから機関紙の印刷・発送作業を行います。人手のいる作業なので、お手伝いしていただけると助かります。

大阪労働者弁護団が有期労働契約法制について意見書を発表しました

 大阪で、多くの闘う労働組合とともに活動している、弁護士さんたちの団体である。大阪労働者弁護団が、以下の意見書を発表しました。

http://homepage2.nifty.com/lala-osaka/ketugi120615.htm
 有期労働契約法制は、合理的な理由なく有期雇用をしてはならないという入口規制が採用されず、このままでは、非正規雇用労働者の待遇改善には結びつきません。弁護士さんたちが指摘している問題を改善するためには、まだまだ社会的に問題を喚起していくことが必要です。

ニコ生で小久保弁護士が生保バッシングに物申す!

若い世代に圧倒的な支持をもつ「ニコニコ生放送」に、生活保護問題のエキスパートである小久保哲郎弁護士が登場します!
「ニコ生」とは、20歳代人口の8割がアカウントをもっているとも言われるインターネット上の動画配信サイトです。
(視聴するにはアカウント登録が必要です。)
生放送で動画が配信できて、かつ、視聴者から直接にコメントが書き込めます。
テーマは、「生活保護バッシング」。

「生活保護バッシングにもの申す」
2012/06/18(月) 開場:20:27 開演:20:30

芸能人報道をきっかけに、吹き荒れる生活保護バッシング。その多くは不正受給を批判するものですが、それらは生活保護問題の実態に即したものなのか? 大阪青年ユニオンが、この問題に詳しい弁護士を交えて徹底検証します。
■出演
小久保哲郎弁護士(生活保護問題対策全国会議事務局長)
中嶌聡(大阪青年ユニオン書記長)

http://live.nicovideo.jp/gate/lv96637246

6月11日(月)第7回行政書士学習会のお知らせ


第7回行政書士学習会のお知らせです。
日時:6月11日(月) 13時50分(14時開始、17時終了予定)
場所:京都大学時計台前集合
内容:行政法
今回から本格的に行政法に入ります。労基署や福祉事務所など行政手続きに関わることもしばしばあると思います。そのような場面での基礎となるような事柄を学ぶことになると思います。
学習部企画の一環なので、組合員には交通費が支給されます。また、組合員でなくても参加できます。みなさまお誘いあわせの上お越しください。

生活保護扶養義務強化問題について障害者インターナショナル日本会議から声明が出されました

 組合員の方から障害者団体が今回の生活保護扶養義務強化問題について声明を出したことが紹介されました。以下に転載します。

【以下引用】
生活保護法扶養義務強化に反対する緊急アピール
http://www9.plala.or.jp/shogairen/newpage10.html#120604
DPI(障害者インターナショナル)は、障害種別をこえ障害者の権利の擁護と自立生活の確立をめざして活動している団体であり、国連・国際障害者年の1981 年に障害をもつ当事者の国際NGOとして結成されました。現在、130 カ国をこえる国々に支部を持ち、国連等の国際機関においては、障害者関連の諮問団体としての地位を得て活動しています。
DPI日本会議は、1986 年の結成以降、全国的に障害当事者が主体となって活動している団体(2012 年6 月現在88 団体)が加盟し、障害者の「完全参加と平等の実現」と「人権の確立」に向けて必要な諸活動を展開してきました。
この間、芸能人の母親の生活保護受給を週刊誌が報じたことを契機に,生活保護制度利用者全体の人権を脅かすマスコミ報道が行われています。
具体的には、民法における「強い扶養義務」(生活保持義務)と「弱い扶養義務」(生活扶助義務)の区別すらされないまま、生活保護法の趣旨までねじ曲げて扇情的な報道がなされ、貧困、餓死、孤独死や年間3万人を超えると言われる自殺者の問題などといった、社会の現状を伝えない一方的な報道姿勢は、人権侵害を助長するものにつながると言わざるをえません。
そして、こうした風潮を背景に、新たに「親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す」といったことが、厚生労働省の動きとして伝えられています。現在、所得保障制度がきわめて不十分な中、生活保護制度は障害者の地域自立にとって重要な役割を果たしており、決して看過することはできません。こうした改悪が強行されれば、障害者の地域自立にとって大きな打撃となることは明白です。
かつて、障害者施設の費用徴収で家族の扶養が強められたとき、「障害者を大きな赤ん坊にするな!」と激しい抗議が障害者運動によって組織されました。現在でも入所施設・病院、家族から、地域での自立生活に移行しようとする際に、親をはじめとする家族の説得が大きな壁となる状況は依然として続いています。
「尊厳死法制化」の動きなど、優生思想が再び強められようとしている今、扶養義務の強化は、障害者の地域自立を後退させるばかりか、障害者・児殺しを誘発させることにつながりかねません。
昨年8 月にまとめられた障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会の骨格提言では、「家族依存の状況」を「放置できない社会問題」としてとらえ、「家族依存からの脱却」を提起しています。扶養義務の強化は、骨格提言が目指すべき方向とも逆行するものとも言えます。
私たちDPI日本会議は、マスコミによる生活保護制度に関する扇情的な報道の中止を求めるとともに、政府や各自治体に対して、家族依存から脱却し、地域社会の中での自立を前進させる制度の確立を訴え、諸団体との連携を強めつつ活動を進めていく所存です。
2012 年6 月3 日
第28 回DPI日本会議全国集会in さいたま 参加者一同

Voice from Fukushima

 大飯原発の再稼働問題が厳しい局面に入りつつあります。今日は福井のほうに行っている組合員の方もおられるかもしれません。ぼちぼちも参加するユニオンネットワーク京都では、来月7月7日に福島現地の住民の方々を招き、今後も長期にわたる被害に対して、私たちがどうつながっていけるのか、どのような支援が求められているのかを考える機会を作りたいと思います。組合員の皆さんの積極的な参加をお願いします。
タイトル:Voice from Fukushima 私たちのつながり方
日時:7月7日(土)午後6時半から
場所:東山いきいき市民活動センター(京阪三条から東へ徒歩五分)
連絡先:ユニオンネットワーク・京都075-691-6191

(1)震災復興を労働運動の課題に
昨年3月11日の東日本大震災から1年以上がたちます。しかし現地の復興はほとんど進んでいません。昨年に引き続き5月の連休にボランティアにいった仲間も、「現地の人は『復興なんて何も進んでない』と少し怒りというか戸惑いを含みながら話されていた」と報告しています。
政府・大資本は復興も金儲けの手段にしようと、儲かりそうなところは特区にして、零細農漁民を追い出そうとしています。それ以外の場所は捨て置かれています。東北は大都市に比較して切り捨てられてきた地域です。大資本は「復旧ではなく復興だ」と公言しているように、自分たちが儲かる範囲でしか復興に取り組もうとはしていません。そのような大資本が被災した人々が望むような震災復興に取り組むわけはありません。それが労働運動が自らの課題として震災復興をとり組まなければならない理由です。

(2)私たちは福島の人たちを孤立させない。
 原発事故による放射能被害は深刻です。政府の情報隠しによって多くの人々が被曝し続けています。政府は「ただちに健康被害はない」「除染を進め安心して住めるようにする」などと言っています。しかしどんな微量でも放射能は人体に有害です。除染で安全を確保することなど無理です。福島第一原発事故で日本全国どこでも程度の差はあれ、大地や食物などは放射能による汚染が進行し、健康が脅かされています。福島県民にはこのような矛盾が集中しています。
 子供のことを考えれば避難したい、年老いた両親のことを考えれば避難できない、避難したとしても仕事はどうなる、いつかは故郷に戻りたい、農家だが家の作物は子供には食べさせられない、福島で今後の農業、漁業はどうなる等々、生活、労働、教育、家族、社会の全ての問題が複雑に絡み合い、放射能汚染が福島の人々を苦しめています。
 私たちは被曝労働をなくせ、と言っていますが、福島第一原発は「被曝労働」によってかろうじて現状が維持されていると言っても過言ではありません。事故の収束までには膨大な「被曝労働者」が生じることは不可避です。また「汚染された震災瓦礫の処理」の問題もあります。このように複雑に絡み合った問題の一つだけを取り上げても、解決することはできません。
 今、私たちが考えなければならないのは、日本社会全体でこの問題を克服していくことを確認することです。福島の人たちだけに矛盾を押し付け、安直な福島切り捨て論に陥らないようにしなければなりません。
 そのためには、「福島の人を孤立させない、大消費地だった都市住民は克服に向けて福島の人より大きな犠牲を払う覚悟が必要」ということです。
 今回、お二人を招いてお話を聞くのは、このような考えから福島では生活・社会全般にわたってどのような問題が発生しているのかを知る為です。お二人から福島の現実をお聞きし、どのようにつながれば福島の人たちを孤立させず、日本社会全体で解決していくことができるのか、という難しく困難な問題を考えていくための第一歩にしていくためです。

(3)大飯原発再稼動を阻止しよう
 野田政権は、福島第一原発事故が終息していないにもかかわらず、大飯原発再稼動を強行しようとしています。
最大で15%電力不足になる、病院や年寄などは命の問題が発生するなどと吹聴しています。大企業の電力使用を落とせば命の問題は発生しません。生産が下がり不況がさらに進行するという問題はあり得ますが、それはあえて甘受すべきです。多くの労働者、市民がが、脱原発による生活レベルの低下を受け入れると表明しています。
電力が15%不足するとしていますが、その前提となっている成長路線、構造改革型復興は少子高齢化などの進行により破たんしています。この破たんした路線を掲げて大飯原発再稼動を推し進めようとする二重の欺瞞を許してはなりません。
7月7日、ユニオンネットワーク・京都は「Voice From Fukusima・私たちのつながり方」を開催し、「福島の人たちを孤立させない」を出発点にして、これから数十年にわたるであろう、復興支援と原発事故被害との闘いの第一歩を踏み出したいと考えています。

■ゲストの紹介■
【佐藤昌子さん】
パナソニック電工株式会社福島営業所(郡山市)に勤務。2008年、パナソニックの派遣切りに抗して全国の支援のもとで闘いぬき、2010年に正社員で職場復帰し、その後地域で非正規労働者の権利防衛に力を注いできた。3.11以後は、福島第一原発が立地する双葉郡から親族の方々を自宅へ受入れて介護に当ると共に、放射線量が高い郡山市の子供たちを内部被爆から守るための集団疎開訴訟の支援、脱原発行動に立っている。
【木幡(こはた)ますみさん】
福島第一原発1~4号機が立地する双葉郡大熊町の町民。現在、同町民多数と共に会津若松市の仮設住宅で避難生活。「女性たちの会」をつくり、仮設住宅のボランティア活動や放射能汚染の学習会など幅広い活動を行なう。大熊町の前町議であった夫の仁さんは昨年の町長選挙に、「帰還できないことを前提にした取り組みの推進」を掲げて立候補した(惜敗)。選挙当時「帰還」を掲げた現町長も、現在は仁氏と同じ立場になっている。

生活保護制度について弁護士さんたちが声明を出しました

 生活保護の水際作戦など、違法な生活保護抑制策と闘ってこられた弁護士の皆さんが、最近騒がれた、タレントの母親の生活保護受給を奇貨として進められているバッシングに対して声明を出しました。重要な内容ですので、ここで紹介します。ぜひ、ご一読ください。

2012(平成24)年5月30日
扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために
                     生活保護問題対策全国会議
                     代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階
℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
                事務局長 弁護士 小久保 哲郎
第1 はじめに
人気お笑いタレントの母親の生活保護受給を週刊誌が報じたことを契機に,生活
保護制度と制度利用者全体に対する大バッシングが起こっている。
そこでは,扶養義務者による扶養が生活保護適用の前提条件であり,タレントの
母親が生活保護を受けていたことが不正受給であるかのような論評が見られるが,
現行生活保護法上,扶養は保護の要件ではない。息子であるタレントの対応に対
する道義的評価については価値観が分かれるところかもしれないが,本件が不正
受給の問題でないことは明かである。
また,扶養が保護の要件となっていない現行法を非難する主張に応えて,小宮山
厚生労働大臣が,「親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す」という事
実上扶養を生活保護利用の要件とする法改正を検討する考えを示す事態にまで発
展している。
しかし,生活保護利用者の息子が人気タレントとなって多額の収入を得るに至る
という,極めて例外的な事例を根拠に,現在改正の在り方を関係審議会に諮問中
の厚生労働大臣が,法改正にまで言及すること自体,軽率のそしりを免れない。
そもそも,扶養が保護の要件とされていないのには理由があるのであり,これは
先進諸外国にも共通しているところである。扶養を保護の要件とすることは,救
貧法時代の前近代社会に回帰する大「改正」であり,ただでさえ「スティグマ
(恥の烙印)」が強くて利用しにくい生活保護制度をほとんど利用できないもの
とし,餓死・孤立死・自殺の増加を招くことが必至である。
まずは,民法上の扶養義務の範囲と程度はどのようになっているのか,現行生活
保護制度における扶養義務の取扱いはどのようになっているのか,先進諸外国の
制度はどうなのかについて,正確な理解をした上で,報道や議論をしていただき
たく,本書面を発表する次第である。
第2 民法上の扶養義務者の範囲と程度について
1 民法上の扶養義務者の範囲
~三親等内の親族が扶養義務を負うのは極めて例外的な場合である。
扶養義務の根拠条文である民法752条には「夫婦は同居し,互いに協 力し扶
助しなければならない。」,同法877条1項には,「直系血族及び兄弟姉妹は,
互いに扶養をする義務がある。」,同条2項には「家庭裁判所は,特別の事情が
あるときは,前項に規定する場合の外,三親等内の親族間においても扶養の義務
を負わせることができる。」と定められている。
同法877条1項に定められた直系血族と兄弟姉妹が絶対的扶養義務者と呼ばれ
ているのに対し,同条2項に定められた三親等内の親族は相対的扶養義務者と呼
ばれ,家庭裁判所が「特別の事情」があると認めた例外的な場合だけ扶養義務を
負うものとされている。
判例上も,三親等内の親族に扶養義務を認めるのは,それを相当とされる程度の
経済的対価を得ている場合,高度の道義的恩恵を得ている場合,同居者である場
合等に,できる限り限定して解されている(新版注釈民法(25)771頁)。
2 求められる扶養の程度
~強い扶養義務を負うのは,夫婦と未成熟の子に対する親だけである。
~兄弟姉妹や成人した子の老親に対する扶養義務は,「義務者がその者の社会的
地位にふさわしい生活を成り立たせたうえでなお余裕があれば援助する義務」に
とどまる。
~具体的な扶養の方法程度は,まずは当事者の協議で決める。
~協議が調わないときは家庭裁判所が決めるが,個別ケースに応じて様々な事情
を考慮するので一律機械的にはじき出されるものではない。
求められる扶養の程度について,民法上の通説は次のように解している。
① 夫婦間及び親の未成熟の子に対する関係…生活保持義務関係
生活保持義務とは,扶養義務者が文化的な最低限度の生活水準を維持した上で余
力があれば自身と同程度の生活を保障する義務である。
②  ①を除く直系血族及び兄弟姉妹…生活扶助義務関係
生活扶助義務とは,扶養義務者と同居の家族がその者の社会的地位にふさわしい
生活を成り立たせた上でなお余裕があれば援助する義務である。
つまり,強い扶養義務を負うのは,夫婦と未成熟の子に対する親だけで あり,
兄弟姉妹同士,成人した子の老親に対する義務(今回のタレントの事例),親の
成人した子に対する義務は,「義務者がその者の社会的地位にふさわしい生活を
成り立たせたうえでなお余裕があれば援助する義務」にとどまる。
そして,民法879条は,「扶養の程度又は方法について,当事者間に協議が調
わないとき,又は協議することができないときは,扶養権利者の需要,扶養義務
者の資力その他一切の事情を考慮して,家庭裁判所が,これを定める」と規定し
ている。つまり,親族間の援助に関することであるから,具体的な扶養の程度又
は方法の決定にあたっては,国家による介入は控え,まずは当事者間の協議に委
ねて,その意思を尊重することとしている。
協議が調わない場合には家庭裁判所がこれを定めるが,その場合には,権利者の
需要(困窮度),義務者の資力だけでなく,権利者の落ち度,扶養に関する合意
(当事者の意思),両者の関係の強弱・濃淡,当該地域の扶養慣行,社会保障制
度の利用状況や利用可能性等を総合考慮して決するものとされており,機械的・
一律に金額が算定されるようなものではない(前掲796頁)。
 3 扶養義務を過度に強調することは現代社会に合わない
そもそも,民法が親族扶養を定めていること自体,その根拠は明確でないとされ
ている(新版注釈民法(25)726頁)。
一応,親族共同生活体という観念上の存在が法的に承認され,その限度で生活共
同の義務が認められているものと考えられているが,「無縁社会」とまでいわれ
る現在,この「親族共同生活体」という観念がますます実体を欠くものとなって
いることは明らかである。すなわち,そもそも,民法上の扶養義務を強調するこ
と自体,現代社会の実態と合わないともいえる。
「近時,少子化,核家族化とともに兄弟姉妹の数も少なく,これらの者が成人し
た後隣居生活をすることは稀であり,それぞれ離れて独立の生活を送っている場
合には交流も少なくなる」ことから,兄弟姉妹については,三親等内の親族同様,
「特別の事情」がある場合に家庭裁判所の審判によって扶養義務を負わせるよう
にすべきとの見解もある(同前771頁)。
後述のように,先進諸国では,別居の兄弟姉妹はもちろん,別居の成人親子間に
おいて扶養義務を課す例はまれであることからしても,立法論としては,兄弟姉
妹については扶養義務を廃止することも十分に検討に値する。
また,裁判所職員総合研究所監修のテキストは,「民法の認める親族的扶養の範
囲は,近代法に類例をみないほど広範であり,特に現実的共同生活をしない親族
にまで扶養義務を課していることを考えると,私的扶養優先の原則の適用に際し
ては,特に慎重な考慮を払うとともに公的扶助を整備強化することによってその
補充性を緩和し,できるだけ私的扶養の機会を少なくすることが望ましい。」
(司法協会編『親族法相続法講義案(6訂補訂版)』195頁)と述べているが,
後に述べる先進諸外国の制度との対比からも真っ当な方向性といえる。
第3 扶養義務と生活保護との関係について
 1 扶養義務者による扶養は保護の要件ではない
   保護の要件について定めた生活保護法4条1項の規定は,「保護は,生活
に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限
度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めている。こ
れに対し,生活保護法4条2項は,「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優
先して行われるものとする」と定め,あえて「要件として」という文言を使って
いない。
「扶養が保護に優先する」とは,保護受給者に対して実際に扶養援助(仕送り等)
が行われた場合は収入認定して,その援助の金額の分だけ保護費を減額するとい
う意味であり,扶養義務者による扶養は保護の前提条件とはされていない。
この点は,厚生労働省も,自公政権時代の2008年に「扶養が保護の要件であ
るかのごとく説明を行い,その結果,保護の申請を諦めさせるようなことがあれ
ば,これも申請権の侵害にあたるおそれがあるので留意されたい。」との通知を
発出している(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知「生
活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」第9の2(『生活保護手帳2
011年版』288頁))。
2 扶養を保護の要件とするのは前近代社会への回帰
 ~旧救護法・旧生活保護法は「イエ(家)制度」を守るため扶養を保護の要件
としていたが,現行生活保護法は,先進諸国の例にならい,扶養を保護の要件か
ら外した。
1929年制定の救護法では,扶養義務者に扶養能力があるときは,まずは扶養
義務者が扶養しなければならないとして,扶養が保護の要件とされていた。その
趣旨は,家族制度・隣保制度が前提とされていたので,もし民法の認める扶養義
務に対して何ら考慮を払わず,国家,公共団体が救護したとすれば,家制度はた
ちまち破壊され,救護は濫救となり弊害が続出することにあるとされていた(新
版注釈民法(25)756頁)。
そして,1946年制定の旧生活保護法でも,「扶養義務者が扶養をなしうる者」
は実際に扶養援助がなされていなくても保護の要件を欠くとされていたが,19
50年制定の現行生活保護法ではこの欠格条項は撤廃されたのである。
   現行生活保護法制定当時の厚生省保護課長であった小山進次郎は,その趣
旨を次のように説明している。
   「生活保護法による保護と民法上の扶養との関係については,旧法は,こ
れを保護を受ける資格に関連させて規定したが,新法においては,これを避け,
単に民法上の扶養が生活保護に優先して行わるべきだという建前を規定するに止
めた。一般に公的扶助と私法的扶養との関係については,これを関係づける方法
に三つの型がある。第一の型は,私法的扶養によってカバーされる領域を公的扶
助の関与外に置き,前者の履行を刑罰によって担保しようとするものである。第
二の型は,私法的扶養によって扶養を受け得る筈の条件のある者に公的扶助を受
ける資格を与えないものである。第三の型は,公的扶助に優先して私法的扶養が
事実上行われることを期待しつゝも,これを成法上の問題とすることなく,単に
事実上扶養が行われたときにこれを被扶助者の収入として取り扱うものである。
而して,先進国の制度は,概ねこの配列の順序で段階的に発展してきているが,
旧法は第二の類型に,新法は第三の類型に属するものと見ることができるであろ
う。」(小山進次郎『改訂増補生活保護法の解釈と運用』119頁)
   すなわち,1950年の段階で,私法的扶養を強調することは封建的で時
代錯誤であるから,現行制度のように改めたものを,現代において扶養を生活保
護の要件とすることは,60年以上も前の前近代的時代に逆行することになる。
3 扶養義務を果たさない扶養義務者に対する費用徴収
  生活保護法77条1項は,「被保護者に対して民法の規定により扶養の義務
を履行しなければならない者があるときは,その義務の範囲内において,保護費
を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から
徴収することができる。」と定めている。そして,同条2項は,「前項の場合に
おいて,扶養義務者の負担すべき額について,保護の実施機関と扶養義務者の間
に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,保護の実施機関
の申立により家庭裁判所が,これを定める。」と定めている。
このように,生活保護法は,扶養義務者が真に富裕であるにもかかわらず援助し
ないケースでは,扶養義務者から費用を徴取できるとの規定をおいている。した
がって,現行法でも,明らかに多額の収入や資産を有しているが扶養を行わない
扶養義務者に対しては,この規定を利用して費用徴収をすることができる。しか
し,この規定を一般に広く適用することは,事実上扶養を保護の要件にするのと
類似の効果を招き,後に述べる弊害をもたらす危険があるので望ましくない。
報道によれば,今回のお笑いタレントのケースでは,高収入を得るようになって
から福祉事務所と協議のうえ仕送り額を決めて仕送りをし,今年に入ってから増
額もしたということである。タレントの年収と仕送り額によっては,道義上その
金額の妥当性が問題になる可能性はあるが,前述のとおり,成人した子の老親に
対する扶養義務は比較的弱い義務であり,具体的な扶養の金額は,当事者の意思
も含めた様々な事情を総合考慮して決すべきものなので,額の当否を一概に判断
するのは困難である。
いずれにせよ,福祉事務所と協議のうえ仕送り額が決められ,そのとおりの仕送
りがなされていたということからすれば,少なくともタレントの母親の生活保護
受給が「不正受給」にあたるものでないことは明らかである。
4 生活保護実務上の扶養義務の取り扱い
(1)違法な水際作戦の常套手段 ~後を絶たない餓死事件
    前述のとおり,本来,扶養は保護の要件ではないが,現場では,保護の
要件であるかのように説明して申請を断念させる「水際作戦」の常套手段とされ
ている。
    日弁連が2006年に実施した全国一斉生活保護110番の結果では,
違法な水際作戦の可能性が高いと判断された118件のうち,「扶養義務者に扶
養してもらいなさい」という対応が49件と最も多かった。
    古くは,1987年1月,札幌市白石区の3人の子どもを持つ母親が,
再三福祉事務所に保護を申請したにもかかわらず,福祉事務所が,「働けば何とか
自活できるはず」「離婚した前夫(子の父)の扶養の意思の有無を書面にしても
らえ」などと主張して,保護申請として処理せず,放置した結果,「餓死」したと
いう,余りにも有名な事件がある。
    また,「保護行政の優等生」「厚生労働省の直轄地」と言われた北九州
市において,2005年から3年連続で生活保護をめぐる餓死事件が発生したが,
2007年の餓死事件は,生活保護の辞退を強要された52歳の男性が「おにぎ
り食べたい」という日記を残して死亡したためマスコミでも大きく報道された。
このうち,2005年に北九州市八幡東区で起きた孤独死事件は,生前,生活保
護の申請に何度も福祉事務所を訪れた被害者に,福祉事務所の担当者が,兄弟姉
妹による扶養の可能性がないか確認してから来るようにと違法に追い返したこと
が原因であった。また,2006年の北九州市門司区での餓死事件も,福祉事務
所の担当者が,子どもに養ってもらうようにとして違法に申請を拒絶したことが
原因で起きた。
    扶養義務を利用した追い返しは,水際作戦の常套手段となっており,少
なくない餓死事件も引き起こしているのである。
(2)扶養照会自体が保護申請上の大きなハードルになっている
   現行生活保護実務上,生活保護の申請があると福祉事務所は,直系血族
(親子)と兄弟姉妹に対して,扶養が可能か否かについての照会文書(扶養照会)
を送付する。扶養が可能であるとの回答が返ってくれば,具体的に幾らの仕送り
が可能であるかの協議を行い,実際に仕送りがされた額を収入認定し,その分の
保護費を減額するが,そうでない場合には,当該世帯の最低生活費を支給するこ
とになる。
しかし,それでも扶養照会の存在は,保護申請をためらわせる大きなハードルに
なっている。疎遠になっている親・兄弟姉妹に,生活保護を利用するほど困窮し
ているという“恥”を知らせたくないというプライドや意地から,生活保護の利用
を拒絶し,過酷なホームレス生活を続けている人なども少なくない。
第4 先進諸外国の扶養義務の範囲と生活保護(公的扶助)制度との関係
 1 イギリス
 (1)扶養義務者の範囲
    配偶者間(事実婚を含む)及び未成熟子(16歳未満)に対する親。い
ずれも同居が前提。
 (2)扶養義務と公的扶助との関係
    上記のとおり同居が前提であるので,世帯の問題として把握されること
になり,そもそも「優先」関係すら問題にならない。
成人した子の老親に対する扶養義務もないので,今回のお笑いタレントのような
ケースは問題になりえず,イギリス人に説明しても何が問題なのかさえ理解でき
ないであろう。
 2 ドイツ
(1)扶養義務者の範囲
配偶者間,親子間及びその他家計を同一にする同居者。但し,高齢者,障害者に
対する扶養義務は,年10万ユーロ(約1200万円)を超える収入がある親又
は子。
高齢者や障害児を持つ世帯の貧困が社会問題となり、2003年に導入された
「基本生計保障」制度において子と親の資産を合算した場合の保有限度を10万
ユーロと高く設定することによって、事実上扶養義務の範囲を狭め、上記課題の
解消を図った。
(2)扶養義務と公的扶助との関係
同居していない扶養義務者から実際に扶養が行われれば収入認定の対象となる。
日本と同様,扶養は保護の要件ではなく,優先関係にあると言える。
同居していない扶養義務者が扶養を行わない場合,扶養請求権を実施機関に移転
させて償還請求をすることができるが(日本の生活保護法77条と類似の規定),
扶養権利者本人(未成年者は除く)が請求を望まない場合は例外とされている。
すなわち,扶養を求めるかどうかを一義的には保護申請者に委ねており,実施機
関は,当事者の意に反して扶養義務者に対する償還請求をすることはできない。
 3 スウェーデン
(1)民法上の扶養義務者の範囲
配偶者間(事実婚(Sanbo)含む)及び未成熟子(18歳未満)に対する親。
(2)扶養義務と公的扶助との関係
   イギリス同様世帯の問題であり,扶養の優先関係すら問題にならない。
    高齢者が,生計援助(生活保護)の申請を行う場合,子ども夫婦と同居
している場合であっても,高齢者自身の生活費と家賃(高齢者一人の分)が援助
の要否判定の基礎となり,子どもに親の扶養(金銭面・介護面とも)をする義務
を課すことはない。ましてや,同居していない子どもに扶養義務を課すことなど
あり得ない。
    したがって,今回のお笑いタレントのようなケースが問題になることは
あり得ない。なお,スウェーデンでは,最低保障年金があり,年金額が低い場合
は住宅手当などが加算される仕組みになっているため,高齢者が生計援助(生活
保護)を受ける必要性があるケース自体がごく稀である。
 4 フランス
(1)扶養義務者の範囲
   夫婦間と未成年(事実上 25 歳未満)の子どもに対する親
(2)扶養義務と公的扶助の関係
   イギリス,スウェーデン同様,優先関係すら問題にならない。
第5 扶養義務の強調は餓死・孤立死を招く
   小宮山大臣が言及した「扶養義務者に扶養困難な理由の証明義務を課す」
とか,一部で主張されているように福祉事務所の調査権限を強化し,扶養義務者
の資産も含めて金融機関に回答義務を課すような法改正がなされれば,どうなる
であろうか。
   生活に困窮した人が,福祉事務所に生活保護の申請に行くと,親兄弟すべ
ての資産や収入が強制的に明らかにされ,申請者本人が望まなくても,親兄弟は
無理な仕送りを迫られることになるであろう。これはほとんどの場合,親兄弟に
とって歓迎せざることであって,親族関係は,むしろ決定的に悪化し破壊される
であろう。
   あるいは,福祉事務所の窓口では,25年前の札幌市白石区での餓死事件
のように,申請者に対し,「扶養義務者の扶養できない旨の証明書」をもらって
くるようにと述べて追い返す水際作戦が横行するであろうが,法改正がなされれ
ば,これは合法として容認され,餓死・孤独死・自殺事件が頻発することになる
であろう。
そもそも,生活に困窮している人は,親族もまた困窮していることが多い上,さ
まざまな葛藤の中で親族間の交際が途絶えていることも多い。先に述べたとおり,
現状でさえ,扶養照会の存在を理由に保護申請をためらう人が多数存在するのに,
扶養が前提条件とされれば,前記のような親族間での軋轢をおそれて申請を断念
する人は飛躍的に増大することは間違いがない。
日本の生活保護利用率は1.6%に過ぎず,現状でも先進諸国の中では異常な低
さである(ドイツ9.7%,イギリス9.3%,フランス5.7%)。この状況
に加えて,さらに間口を狭める制度改革がなされれば,確実に餓死・孤立死・自
殺が増える。
これは,緩慢なる死刑である。しかも,死刑囚ですら糧食を保障されているのに,
それさえ奪うという意味では死刑よりも残虐な刑罰である。何人もそのような刑
罰を受けるいわれはないし,何人もそのような刑罰を科す権限はない。制度改革
を進めた政治家や報道機関は,死者に対してどのような責任がとれるのか,冷静
になって慎重に検討することが今,求められている。
かつて,2006年3月4日,大阪市立大学における日独ホームレス問題国際シ
ンポジウムにおいて,前ドイツ連邦副議長であるアイティエ・フォルマー氏は,
冒頭「その社会の質は,最も弱き人がどう扱われるかによって決定される」と挨
拶され,「貧困者への施策を国政の最も重要な施策として位置づけ,国政を運用し
てきた」ことを強調された。
日本においても,政治と報道にどのような「貧困政策」を盛り込むのかが,その
「質」のあり方とともに問われている。

以 上

5月29日(火)第6回行政書士学習会のお知らせ


第6回行政書士学習会のお知らせです。
日時:5月29日(火) 13時50分(14時開始、17時終了予定)
場所:京都大学時計台前集合
内容:民法(物権)
*今回は月曜日ではなく火曜日です
民法にもなじんできました。この日に物権を取り上げてひとまず民法はおしまいです。その後は行政法に入ります。
この会では理論だけでなく、登記の取り方、不動産屋との交渉の仕方、家事調停の使い方などを現物を交えて学ぶことができるのがありがたいです。組合活動や日常生活ですぐに活用できる知識です。
学習部企画の一環なので、組合員には交通費が支給されます。また、組合員でなくても参加できます。みなさまお誘いあわせの上お越しください。

5月の定例カフェ


昨日は第四土曜日ということでユニオンぼちぼちの定例カフェを京都事務所でしました。
5月カフェ
Sさんがメインで作ってくれたキーマカレーは本格的でした。オニオンスライスを食べる直前にかけるのが一押しだそうです。自家製梅酒の差し入れもあり、豪華なカフェとなりました。
それでも会費は一人200円ちょっとですみました。ありがたいことです。
毎月第四土曜日にはこうしたカフェをしていますので、お気軽にお越しください。組合員には交通費も支給されます。