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厚労省の偽装請負判断基準の改悪

偽装請負を促進させる通達は撤回させないといけません。
厚生労働省の「ご意見」ページ
■厚労省の偽装請負判断基準 「かえって助長」撤回要請
 http://www.asahi.com/national/update/0410/TKY200904100287.html
(2009年4月10日,朝日新聞)
「請負を使う企業は、請負会社の労働者に直接、指揮命令することはできない。通達では、新製品の製造を始める時の補足的な技術指導など、例外となる場合を示しているが、同ユニオンは「言い逃れの指南書に使われかねない」と指摘した。
 通達ではまた、請負を使う企業と請負会社の労働者が、同じ作業スペースで混在して働くことや、同じ作業服を着るなど偽装請負の典型例とされる行為も、「それだけでは偽装請負とは判断されない」と説明している。同省の担当者は「外形的事実だけではなく、実態も踏まえて判断するという趣旨だ」と説明したが、鴨会長は「これでは違反企業を取り締まれなくなる」と批判した。」
【問題の通達】

「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai03.pdf
「1. 発注者と請負労働者との日常的な会話
Q請負労働者に対して、発注者は指揮命令を行うと偽装請負になると聞きましたが、発注者が請負事業主の労働者(以下「請負労働者」といいます。)と日常的な会話をしても、偽装請負となりますか。
A発注者が請負労働者と、業務に関係のない日常的な会話をしても、発注者が請負労働者に対して、指揮命令を行ったことにはならないので、偽装請負にはあたりません。」
などなど

労働審判ほか個別労使紛争の解決機関

労働契約の個別化が進み、働く人1人1人と会社との間でのトラブルが増えています。
それに対して、主に1人でも誰でも入れる労働組合・ユニオンが対応してきました(ユニオンぼちぼちもその1つです)。
現在、そうした個別労使紛争を解決するための行政や司法のシステムも整備されつつあります。例えば労働審判制度などですが、他にも色々あるので整理したいと思います。
■司法
□裁判所

・個別的労使紛争に関して最終的解決を強制的に導いてくれる唯一の制度
・地方裁判所における民事訴訟
・簡易裁判所における140万円以下の民事訴訟、60万円以下の金銭の支払に関する少額訴訟、民事調停、支払督促も利用されている
□労働審判制度
労働審判法にもとづき2006年4月1日より運用を開始
日本で初めての裁判所に設けられた労使紛争解決のための特別の手続き
基本的な特徴
①労働審判委員会
 事件を整理し、調停、審判を行う。
 裁判官が務める労働審判官1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者として労働者側と使用者側から各1名ずつ選出される労働審判員2名によって合計3名で構成される。
迅速な手続
 特別な事情のないかぎり3回以内の期日で終結するものとされる(労働審判法15条)
 3~4ヵ月での解決を想定
 第1回期日(申立の日から40日以内の日に指定される)
  「利益調整型調停」「判定的調停」
 第2回期日(第1回期日から「2、3週間から1ヵ月程度」の後に開かれる)
  調停成立=「裁判上の和解」と同一の効力を有する
  調停案が拒絶された場合は審理を終結し、調停案とほぼ同一の内容の「労働審判」を下す
 第3回期日(調停作業の続行や調停受託のための考慮期間が必要であると判断したとき、第2回期日から「1、2週間程度」の後に開催)
 調停案が受託されないときは審理を終結し「労働審判」を下す
③柔軟な手続
 委員会は、審理が終結するまでは必要に応じていつでも調停による解決を試みることができる
④訴訟手続への連携
 2週間以内に適法な異議申立を起こった場合、労働審判は効力を失い訴訟手続に移行する
■行政
□労政主管事務所

・労政主管事務所は地方自治法附則4条2項にもとづく都道府県知事の任意設置機関
 東京での名称は「労働相談情報センター」、神奈川は「(商工)労働センター」、大阪は「総合労働事務所」、福岡は「労働福祉事務所」である。
・労働相談のみならず「斡旋」も行っている
□地方労働委員会
・労働委員会は労働組合法にもとづき設置されている
・従来は集団的労使紛争のみを処理してきたが、2001年4月より個別的労使紛争の斡旋(・相談)を開始

□都道府県労働局(厚生労働省)

・1998年10月1日から「紛争解決援助制度」を行ってきたが、個別労働紛争解決促進法(2001年10月1日施行)にもとづき、総合労働相談、労働局長による助言・指導(・勧告)及び紛争調整委員会による斡旋(・調停)を開始
■民間
弁護士会紛争解決センター
・民間の裁判外紛争解決機関(ADR:Alternative Dispute Resolution)

大学生の内定取り消し問題

「内定」は「雇用契約の予約」であり、労働契約が成立したものとして内定取り消しには「解雇」と同じ取り扱いが必要とされてきました。
今回報道されている労働審判の内容は、内々定の取り消しにも違法性があると裁判所が認めた画期的なものです。
■内々定取り消しは「違法」=解決金支払い命じる-福岡地裁
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009041300248
(4月13日,時事通信)
「福岡市内の不動産会社に内々定を取り消されたとして、今春卒業した元男子大学生が同社に慰謝料など105万円の損害賠償を求めた労働審判の第3回審判が 13日、福岡地裁であった。調停が成立せず、藤田正人審判官は内々定の取り消しは違法として解決金75万円の支払いを同社に命じた。」
■内々定取り消し違法 福岡地裁労働審判 企業に解決金命令
 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/89137
(2009/04/13付 西日本新聞夕刊)
「今回の労働審判に、九州大大学院法学研究院の野田進教授(労働法)は「内々定取り消しの時期が、内定式の直前だった点が判断のポイントになったのではないか。今回は男性側が地位確認まで求めておらず、損害賠償請求だけだったが、内々定取り消し事案一般に警鐘を鳴らす意味があるだろう」と話した。」
■内定取り消し企業に大学が“ブラックリスト”
 http://sankei.jp.msn.com/life/education/090413/edc0904131245001-n1.htm
「広島経済大(広島市安佐南区)など広島県内の計12の大学・短大は今年1月、内定取り消しの状況について相互に情報交換。計18人の学生が取り消されたことが確認され、企業名の公開を始めた。なかには卒業間近の4年生の内定を取り消しておきながら、数カ月後には3年生を対象とした採用募集を行っている企業もあり、大学側は「わずかな期間で経営環境が好転したとは考えにくい」と不信感をあらわにする。」

厚労省「精神障害等の労災補償について」ほか

見直された精神疾患による労災判定の基準
厚生労働省のサイトで詳しく紹介されています。
■リーフレット
●精神障害等の労災認定について
[PDF]
●精神障害等の労災補償について[PDF]
また東京都による「平成20年度ひきこもりの実態調査結果」では、
職場の問題がひきこもり状態につながっている場合が多いことがわかったそうです。
○35歳以上のひきこもりのきっかけでは「職場不適応」が最多(47%)
 ひきこもりのきっかけ(複数回答)
 (35歳以上)・職場不適応(47%)・人間関係の不信(33%)・病気(22%)
 (34歳以下)・不登校(53%)・人間関係の不信(42%)・職場不適応(13%)

○親和群の退職理由は「仕事上のストレス」「肉体的・精神的健康」の問題などが多かった。
 ・仕事上のストレスが大きかった(親和群51%、非親和群30%)
 ・肉体的・健康的に健康を損ねた(親和群38%、非親和群16%)
○親和群は、若年者の定着を促す企業内施策が行われていないと思う者が多かった。
職場に適応できなかったのか、それとも職場の状況や労働条件の方に無理があったのか。
ぼちぼちに寄せられる相談などから考えると、後者の場合が多いように思われます。

非常勤の臨床心理士らが労組結成

■非常勤の臨床心理士らが労組結成 都の事業団と団体交渉
 (朝日新聞,2009年4月6日)
 http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY200904060248.html
「同支部組合員は週4日勤務の非常勤職員ら8人。今年度から週5日勤務とする提案を、雇用主である都社会福祉事業団から受けた。だが非常勤のままで、二百数十万円の年収も数十万円増える程度。「時給換算ではマイナス」といい、受け入れを拒否して団体交渉中という。会見した木村秀委員長は「心理士の果たす役割は重くなっている。不安定な雇用環境は、子どもら援助対象者に影響する」と訴えた。」
ぼちぼちへの相談でも、心身を企業に壊されてしまっている方が多いです。
生活とメンタルの問題は、もはや労働問題と切り離すことはできません。
しかし、その受け手となる専門家が低賃金に苦しんでいるなんて、本当にこの社会はおかしいと思います。
↓のニュースも変な話です。世の中があべこべになっていますね。
■生活危機:ハローワーク なぜ今?職員削減 年度末に大量解雇なのに
(毎日新聞,2009.04.06)
 http://mainichi.jp/select/biz/news/20090406dde041020005000c.html
■生活危機:ハローワーク なぜ今?職員削減 年度末に大量解雇なのに
4月から約300人減り、4~5時間待ち
年度末の大量失職の影響で6日、ハローワークに長い列ができた。「仕事探しの時間より待っている時間の方がはるかに長い」と失職者のため息が漏れる。一方、厚生労働省はこうした状況下にもかかわらず、07年から3年連続となるハローワークや労働基準監督署の職員削減を続けた。4月からハローワークだけで約300人の職員が削減され、「何を考えているのか」と利用者や職員から批判の声が上がっている。【東海林智、工藤哲】

今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方

厚生労働省の開いてきた「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会」の報告書ができたそうです。
その中の一部を引用します(強調は引用者)。

 このような調査結果を踏まえ、先行研究では、本当に知識を必要としている人と実際に知っている人との間で「知識のミスマッチ」がある、との指摘がなされている。例えば学歴が高くない者や中小企業で働いている者あるいは卒業後の進路がフリーター又は未定である学生・生徒など、現在相対的に低い労働条件で働いていたり、将来的に相対的に低い労働条件になる可能性が高い人ほど、必要な知識を理解していない可能性が高いといった指摘である。
 さらに、労働者の権利を「知っている」ことが権利を守るための「行動」に直結するとは限らないことも指摘されている。すなわち、労働者の権利が実際に守られるためには、法律で定められているだけではなく、まずは労働者自身が自分の権利について理解し、その上で権利を行使できなかった場合や不利益な取扱いを受けた際にそれが違法であることに気付き、さらに権利を行使する手段が活用できることが重要ではないかとの問題提起がなされ ている。
 なお、先行研究では、労働者の権利を「知っている」ことが「行動」に直結するとは必ずしも言えないが、意識や考え方には影響を与えている可能性が高い点もあわせて指摘されている。例えば、労働者の権利を知っていることが、権利実現の意識を高め結果的に組合の必要性や組合支持を高めるのではないか、社会保障の必要性に関する意識を高めるのではないか、有給休暇に対する法知識が休日・休暇に対する満足度を高めるのではないか、といった指摘である。

◆今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会報告書
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/02/h0227-8.html
 今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方については、「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会(座長:佐藤博樹東京大学社会科学研究所教授)」において、平成20年8月より6回にわたって検討が行われてきたところであるが、今般、別添のとおり同研究会の報告書が取りまとめられたので公表する。
(別添)
・今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会報告書
 1~9ページ(PDF:402KB)、 10~33ページ(PDF:443KB)、 全体版(PDF:732KB)
・参考資料集 全体版(PDF:4,549KB)

日本、無保険失業者の比率77%と雇用保険法改正案可決

雇用保険法が改正され雇用保険の加入要件が短くなり、また「雇い止め」にあった際の失業手当ももらいやすくなる予定です。
こういった改正の背景には、日本の加入要件が実情にあっておらず、あるいは加入していない事業主が多すぎて、
無保険失業者がメチャクチャ増えていることがあります。
■無保険失業者の比率77% 日本、先進国で最悪
 http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009032501000123.html
(2009.3.25 共同通信)
アセって仕事を探すと労働条件を選べず、ドンドンと悪い条件の仕事にはまり込んでいってしまうことになりやすいです。
また条件を選べない労働者が増えると、労働力の叩き売りになり、
労働条件が全体的に悪化していきます。
よく「仕事を選ぶな」という批判?説教?をよく聞きますが、
仕事を選べない労働者がいることは全ての労働者を不幸の始まりです。
みんなで普通に仕事を選べる状態を作っていきましょう。

■雇用保険法改正案、衆院厚労委で可決…「非正規」救済柱に
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090318-OYT1T00641.htm
 改正案では、雇用保険の加入要件を現在の「1年以上の雇用見込み」から「6か月以上」に緩和するほか、雇い止めにあった非正規労働者が失業手当を受給するために必要な雇用保険加入期間を「1年」から「6か月」に短縮する。
(2009年3月18日13時59分 読売新聞)

離職票を会社が出さないと言って困っています

相談】会社が離職票を出さないと言って困っています。
【回答】会社の言っていることは違法です。

雇用保険法施行規則第17条は、離職票の交付について以下のように定めています。
「公共職業安定所長は、次の各号に掲げる場合においては、離職票を、離職したことにより被保険者でなくなつた者に交付しなければならない。」
公共職業安定所から受け取った離職票を会社は必ず労働者に渡さないといけません。
また、会社(事業主)は退職日の翌々日から数えて10日以内に、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を公共職業安定所に提出しないといけません(雇用保険法施行規則第7条)
「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」には、あなた本人が署名することになっています。
そのとき「離職理由」も確認をして下さい(「離職理由」を最終的に判定するのは職業安定所長です。異議がある場合は申し出ることができます)。
提出後、会社に「雇用保険被保険者離職票」(離職票の正式な名前)が届き、あなたはそれを送ってもらうか受け取りに行ったあと、公共職業安定所で「求職の申込み」を行ったのち、「離職票」を提出します。
この手続きが終わると、公共職業安定所から給付の「受給資格者証」が交付されます。