労働者の権利を学ぶ教材集『<働く>ときの完全装備』が好評発売中です(印税の一部が組合にカンパされます)。
「ユニオンぼちぼち」の組合員が『反貧困学習』を出している西成高校の肥下先生と一緒に作ったので、すぐに使える教材集です。とても実践的で、すでに働いている人の力にもなります。
<働く>ときの完全装備 15歳から学ぶ労働者の権利 (2010/09/16) 橋口 昌治肥下 彰男 |
反貧困学習 格差の連鎖を断つために (2009/06/29) 大阪府立西成高等学校 |
■肥下先生の書かれた「はじめに」より
「先生、僕はもうダメです。先生に会いに行く交通費もありません。」悲鳴にも似たメールが卒業生から届きました。いまから思えば、私と本書をともに執筆することになった関西非正規等労働組合ユニオンぼちぼちのメンバーとを出会わせてくれたのは卒業生の彼の存在であったと言えます。
高校時代の彼はとにかく真面目に何事にも取り組む生徒であった。在学中に母親を亡くした後もしっかりと自分の進むべき道を歩み、私を含めた周りの多くの人たちに影響を与えてくれた生徒だった。卒業後もいろんな面で彼に支えられてきたのはむしろ私のほうでした。
彼は大学卒業後、地元で一旦は就職するも人間関係のもつれから退社することになり、その後人材派遣会社で働いていました。しかし、その会社では違法な二重派遣も常態化し、経営者はいかに安い賃金で日雇い派遣の労働者をこき使い、そして賃金をピンハネして儲けるかに躍起になっていたそうです。「人を人と思っていない」会社に彼は耐えきれずに退社しました。その後、会社からいやがらせを受け続け、彼は精神的にどんどん追いつめられていきました。私はこの状態が続けば、彼は「殺される」かもしれないと感じました。このような状況の彼を物心両面でサポートしていたのが、ユニオンぼちぼちのメンバーでした。彼のように様々な理由で高校卒業(中退)後に、家族・企業(従来型の労働組合を含む)・地域からの支えを受けることができない若者を、ユニオンが労働相談だけでなく生活相談も含めてしっかりサポートしていることを知り、正直私自身のユニオンに対するイメージも大きく変わりました。
彼のように社会に押し潰されそうになっている若者がいまの日本には無数にいるに違いない。連絡のとれていない卒業生や中途退学生徒の中に、同じような状況に陥っていて、しかもどこに助けを求めていいかもわからない者もいるのではないか。在学中に、何を伝え、ともに学んでおくべきだったのか。「学校」の果たせる役割とは何なのか。